ドメーヌ・アンリ・マニャン ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエイユ・ヴィーニュ 2017
「アン・シャン」「レ・セルキュイユ」「シャンペリエ」等、8つのリューディーより。沖積土質・泥灰土質土壌。樹齢約40~100年(平均約60年)のV.V.。カヴァン社製ジュピーユ、コンピエージュ、フォンテーヌブローの各森産の新樽30%、1~3回使用樽70%で10ヶ月間の熟成。
テイスティング・コメント
紫がかった濃いめのルビーレッド。粘性は高め。香りは新鮮なラズベリーやザクロ、オレンジピール、バラ、ローズヒップのヒント。時間の経過とともにストロベリージャムのようなほんのりと甘い香りが重なりその魅惑的で、鮮明かつ華やかなアロマを引き立たせる。他に紅茶、シナモン、心地よいオークの香り、金属的なミネラルのニュアンスが感じられる。口に含むとなめらかでピュア。多肉質で、寛大な赤いベリーフルーツを思わせ濃縮感が漂う。若いが、継ぎ目のない舌触りで、硬さはない。純粋で、もぎたての果実を頬張っているようで、フルーティー、自然な美味しさが堪能できる。数年後の熟成ももちろん加味できるが、現時点で飲み頃に入り素直にその美味しさが実感できる。先ずはジユーシーで、親しみやすさを感じていただきたい。合わせるお料理は、赤身肉料理、鴨肉のロースト、ジビエ、マグロの赤ワイン煮など。
2019年5月試飲
ドメーヌ・アンリ・マニャン
前世紀末から今世紀初頭にかけてのおよそ10年間、当時のアメリカ市場の嗜好を主たる要因として、ブルゴーニュにおいてもとりわけ濃厚なパワーワインが造られたことは醸造史に記録されるでしょう。そしてこのことは、その後のアメリカ市場の失速と、世界各国のワインラヴァーがよりナチュラルで上品なワインへと里帰りしたことによって当該生産者のカーヴに築かれた山のような在庫の記憶とともに、若手の醸造家たちにとって良い反面教師となりました。
中でもヴォーヌ・ロマネ村と並んで大きな反動を経験したジュヴレ・シャンベルタン村では、新しい世代の造り手たちがとりわけ熱心に、一丸となって、ピノ・ノワールのあるべき姿を再探求する姿が見られます。
「超完璧主義者のドゥニが、格別に力強い深い色のジュヴレ=シャンベルタンを造っていたが、2006年に不時の他界。息子のアルノはもう少し優雅なものを求めている」(ヒュー・ジョンソン。「ドメーヌ・ドニ・モルテ」を評して)。
父の後を継いだこのアルノー・モルテがそのリーダー格で、彼を中心とした研究ネットワークから、品質を劇的に向上させた新世代が現れてきています。その最たる造り手が「アンリ・マニャン」です。1656年からジュヴレ村の住人であったというこの由緒ある生産者は、ヨーロッパ中の個人のワイン愛好家達やワインショップなどからの注文で毎年完売が続いていたために、品質を大きく向上させようという動機はやや希薄でしたが、2007年からワイン造りに参画した息子のシャルルが、アルノー・モルテやベルトラン・デュガらとの情報交換を通じて栽培から醸造まで多岐に渡る改革を行い、大きな品質向上を成し遂げました。
とても誠実な彼が畑仕事の合間を縫って一生懸命まとめてくれたレポートには、「結論」として次のように書かれています。
「ピノ・ノワールという品種ならではの、繊細で香り高いワインづくりを目指しています。それは気品があり絹のようになめらかなタンニンを伴う、まろやかでバランスの良いワインです。私たちは、ワインの自然な風味を”修正する”ことができると考えられている(技術や添加物等の)あらゆる干渉を制限します。あらゆる「アグレッシブなもの」は歓迎しません。ピノ・ノワールは、肩の力を抜いて自然な悦びをもたらしてくれるもの、また、美味しい料理を引き立てるものであると考えています」。
栽培:実質ビオロジーの厳格なリュット・レゾネ。化学肥料、除草剤、殺虫剤、防腐剤は原則として一切使用しない
醸造:3回選果。除梗100%。天然酵母のみで発酵。伝統的な人足による櫂入れ。樽は「フィネスとアロマに特に優れた」ジュピーユの森産のものを中心に使用。無清澄、ノンフィルターでビン詰め