シャトー・ディケム 2009 極甘口 専用木箱入り
【極甘口】
評価
2009VT ワイン・アドヴォケイト:100点獲得
「2009年のディケムは後世に語り継がれる素晴らしいワインであり、何十年にも亘って光り輝き続けるだろう」
ワイン・アドヴォケイト 2014.06
シャトー・ディケム

講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
ソーテルヌ地方の中心部に位置するディケムは、たくさんの第一級シャトーに囲まれた畑を見下ろす小さい丘の頂きに雄大に広がっている。1785年から1997年までの間、このシャトーは、1家族によって所有されていた。アレクサンドル・ド・リュル・サリュース伯爵は、この広大なシャトーの経営責任者である一族の最も新しいメンバーで、1968年に叔父からこのシャトーを引き継いだ。1997年に、このシャトーは巨大なコングロマリット、モエ=ヘネシーに売却されたが、この売却はリュル・サリュース伯爵の意義により成立せず、現在も彼が管理人である。
ディケムの偉大さとユニークさには、いくつかの要因があることは間違いない。まず第一に、独自の微気候を伴う完璧な立地条件があること。第二に、リュル・サリュース家は、97kmにも及ぶパイプを用いた精巧な排水システムを設置したこと。第三に、ディケムには、経済的な損失やトラブルを斟酌せずに、最も良質なワインだけを生産しようという狂信的とも言える執念が存在することだ。ディケムが、近隣の畑に比べてこれほど優れている最大の理由は、この最後の要因にある。
ディケムでは、1本の葡萄の木からたったグラス1杯のワインしか造らないと誇らしげに語られる。多くの場合、ディケムに6週間から8週間滞在し、最低でも4回の時期に分けてブドウ畑を回る150人もの摘み手のグループによって、ブドウが完全に成熟するのを待って一粒一粒摘まれる。1964年には、摘み手たちは、13回にもわたって畑を回ったが、不向きと見なされるブドウを収穫しただけで、結局このヴィンテージではまったく何も生産しなかった。ワイン醸造をしているシャトーの中で、収穫全体を自発的に格下のワインにまわすところ、あるいはそれが経済的に可能なところはほとんどない。
ディケムは信じられないような熟成の可能性を持っている。ディケムのワインはあまりにリッチで、ふくよかで甘いために、その多くはいつも10回目の誕生日を迎える前に飲まれてしまう。しかし、ディケムが最高の飲み頃になるにはほとんどの場合15年から20年の年月が必要であり、偉大なヴィンテージは50年あるいは75年以上経っても、新鮮で頽廃的な芳醇さを備え続けているだろう。私がかつて飲んだことのある最も偉大なディケムは1921年だった。驚くほど新鮮で生き生きとしており、その贅沢さと芳醇さは決して忘れることはないだろう。
こうした品質への情熱的なこだわりは、何も畑に限ったことではない。ワインは新樽の中で3年以上かけて熟成され、全収穫量の20%が蒸発により失われる。リュル・サリュース伯爵が瓶詰めできると見なしたワインでも、最良の樽からだけ厳しく選別される。1980年、1976年、1975年といった秀逸な年には、樽の20%が排除された。1979年のような困難な年には、60%のワインが外された。1978年のような手に負えないヴィンテージでは、85%のワインがディケムとして売るのにふさわしくないと判断された。私の知る限り、これほど無情な選別過程を採り入れているシャトーはほかにない。ディケムでは、芳醇さが少しでも失われることを恐れて、決して濾過処理を行わない
ディケムはまた「Y」と呼ばれる辛口のワインをつくっている。これは特色のあるワインであり、ディケムらしいブーケを持ちながら、樽香が強く、味は辛口で、通常は非常にフルボディで際立ってアルコール度数が高い。力強いワインで、私の舌にとっては、フォアグラのようなコクのある食べ物と一緒に出されるのが最高である。ディケムは他の有名なボルドー・ワインと違って、プリムール、つまり先物で売られることはない。このワインは、通常はそのヴィンテージの4年後に、極めて高い価格で出荷されるが、費やされた労力、リスク、そして厳格な選別過程を考えれば、最高の値札に値する数少ない高級価格ワインの1つである。
一般的な評価
ディケムがボルドーに2つとない偉大なワインであることは、説得力のある真実だと主張できる。