シャトー・ムーラン・ボリー 2015
サン・ジュリアンの銘醸デュクリュ・ボーカイユのボリー家がリストラックで造るワインです。
テイスティング・コメント
艶やかな濃いルビーレッド、やや深みのある色調。スモーク、焙煎したコーヒー豆やココア、トーストなどローストしたオークの香りが印象的で、ブラックチェリーや小粒の赤い実、ローリエ、ブラックペッパーのアロマが混ざり合う。さらに黒トリュフやタールの香りに、ミネラルと土っぽさ。口に含むとソフトでなめらか。タンニンは緻密で、溶け込んだ酸とのバランスがよくビロードのようなテクスチャー。ジューシーかつスパイシーな風味が伸びやかに広がり口中に旨みが染み渡る。ボディは中庸で、重すぎないまでのコクがあり長く続くアフター、フレッシュでまとまりの良い後味。合わせるお料理は、赤身肉のグリル、仔羊や鶏肉のロースト、鴨肉の赤ワイン煮、ビーフシチュー、ジビエなど。
2019年9月試飲
シャトー・ムーラン・ボリー
シャトー・ムーラン・ボリーは、サン・ジュリアンの銘醸デュクリュ・ボーカイユのボリー家がリストラックで造るワインです。『デュクリュ・ボーカイユ』。“デュクリュ”とはシャトーの名声を築き上げた元オーナーの名から、“ボーカイユ”とは「美しい小石」の意があり、その名の通り、このシャトーの畑には、多彩な小石が散りばめられています。ミネラルを豊富に含む、均整のとれたワインを生み出し、その味わいにはある種の気品が感じられます。1855年のメドック格付け当時には、サン・ジュリアンから第1級シャトーは生まれませんでしたが、最高品質を求め続けたボリー家によって、シャトーは大きく変貌を遂げました。今やその存在は単に第2級格付けシャトーにとどまらず、同アペラシオンのレオヴィル・ラス・カーズとともに“スーパー・セカンド”として5大シャトーを脅かす位置にあります。
シャトー・デュクリュ・ボーカイユ
講談社『 BORDEAUX ボルドー 第4版』 ロバート・パーカーJr.著より以下抜粋
デュクリュ=ボーカイユは、木々に囲まれた、ジロンド河がよく見える、絵葉書のように美しい風景の中にある。所有しているのはボリー家で、今は亡きジャン=ウジェーヌ・ボリーはメドックでは数少ない、この地に在住する当主であり、この地方の偉大な名士でもあった。過去30年間、彼はデュクリュ=ボーカイユの品質を大いに高めたため、2000年、1996年、1995年、1985年、1982年、1981年、1978年、1976年、1973年1970年、1966年、1961年のヴィンテージはメドックのどの一級シャトーにも匹敵する出来栄えであった。そのワインへの情熱、高品質へのあくなき追求、注目すべき謙虚さと、ボルドーの大使として頻繁に海外を訪問したことから、彼はこの地域で最も尊敬されるワイン関係者の一人だったのである。数年前に亡くなった後は、グラン=ピュイ=ラコストに住む息子のグザヴィエがデュクリュを全面的に管理していたが、2003年に兄のブリュノに引き継がれた。
デュクリュ=ボーカイユのワインの本質はエレガンスと均整、バランス、気品、格、そして独自性である。サン=ジュリアンで最もたくましい、最も豊かな、最もフルーティなワインになることはない。もともと頑固なまでに時間をかけて熟成するワインである。デュクリュ=ボーカイユの最高のヴィンテージのほとんどで、すばらしく調和のとれた果実味と力強さが見られるようになるまでには最低10年はかかるのが通例である。多くの点で偉大なワインなのだが、細部へのこまやかな配慮、最高のブドウ、最高の樽だけが瓶詰めを許される厳しい選別、そして保守的なブドウ栽培方法といったことのすべてが、このワインの成功に大きく寄与している。 とはいえ、デュクリュ=ボーカイユの1987年~1990年のヴィンテージには問題があった。私のテイスティング・ノートはすべて、これらのヴィンテージのワインの多くにカビ臭いアロマがあったという事実を反映したものとなっている。おそらく古いシェ(ワイン蔵)の断熱材から発せられた不快なにおいが移ったのだろう。この蔵は完全に建て替えられ、においのもとも断ち切られた。この問題は1990年、1989年、1988年のすべてのワインに影響を与えたわけではなく、現在では根絶されているものだが、こうした不具合もあったため、テイスティング・ノートからはこれらのヴィンテージを除外してある。
デュクリュ=ボーカイユはボルドーの二級では最も価格の高いものの一つである。その高価格は、このワインに対する国際的な需要の高さと、一貫した高品質を反映したものである。