ジェ デストゥルネル メドック 2019
サン テステフのトップに君臨するシャトー コス デストゥルネルのつくるAOCメドック
革新を続けたブリュノ プラッツから、その息子ジャン ギョーム プラッツへと引き継がれ、変わらず躍進を続けているメドック格付け第2級「シャトー コス デストゥルネル」。新たな試みとして目を向けたのが、伝統あるこのボルドーの地で“ニュー ワールド スタイルのワインを造り出す”というものでした。ニュー ワールドの中でも著しい発展を見せる南アフリカの若手醸造家トレザンバンセキューとタッグを組み、ボルドーの北部メドックにある「グレ」という港の近くにある畑を購入し、近代的な設備を備えた醸造所を新設しました。
2003年が初ヴィンテージとなる「グレ」の誕生は業界に大きな激震を走らせました。夏場の猛暑もあり凝縮度が増したワインは『ニュー ワールド ワインより繊細。ボルドー ワインよりパンチがある』と、これまでのボルドーには無い新しいスタイルのワインを生むことに成功。ボトルも新スタイルのワインに相応しいデザインが起用され、伝統的なボルドー型のボトルではなく、スタイリッシュで個性的なものが採用されました。
グレ バイ コス デストゥルネルは、2019ヴィンテージより、「ジェ デストゥルネル」に名称変更しラベルもゴージャスな金色になって生まれ変わりました。
評価
2019VT ジェームズ サックリング: 92 - 93点獲得
テイスティング コメント
エッジが紫がかった深いガーネット。香りはブラックベリー、ブルーベリー、カシス、スミレのアロマにタイム、ミント、甘草、ローストしたオークのノート。味わいは柔らかく継ぎ目のないシルキーなテクスチャー。新鮮でたっぷりとした果実味があり表現力が豊か。ブラックベリーや野生の花、ハーブの風味が入り混じりほろ苦いオークの要素が心地よいアクセント。モダンなつくり、親しみやすい味わい。それでいてエレガントさも兼ね備えている。
合う料理、牛肉のタタキ、ローストビーフ、ビーフシチュー、赤身肉料理、すき焼きなど。
2022年12月試飲
シャトー コス デストゥルネル
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
コス・デストゥルネルは(驚いたことに、コスはsを「ス」と発音するのだ)、1990年代半ばにベルナール・タイヤン・グループに売却され、その後スイスの大事業家ミシェル・レビエに転売されたが、それまではブリュノ・プラッツの見事な管理のもとで、サン=テステフでは最高の評価を得ていたものだ。1982年から1996年までのワインは急速に力をつけてきたし、ほとんどのヴィンテージでメドック最上のワインを生産するだろうと期待できたのである。
シャトーはアジア風のパゴダのような外観で、ポイヤックとの村境のすぐ北、その著名な隣人ラフィット・ロートシルトを見下ろす丘の背にある。メドックにしては珍しく、コスはブレンドに使うメルロの比率が高いことと(40%)、新樽を使う比率が突出して高いこと(60~100%)が他と一線を画す特徴だ。この、オー=メドックでは最も高い部類に入るメルロの比率が、最近のヴィンテージに目立つ、肉づきの良い、豊かな舌触りという個性の元である。
一般的1990年代後半まで経営者であり所有者でもあったブリュノ・プラッツは、新しいワイン技術を取り入れる前衛的なつくり手に属した。このシャトーは、ボルドーの主要なシャトーの中では数少ない、樽熟成前と瓶詰め前の2度濾過処理することを金科玉条としているシャトーの1つだったのだ。しかしながら、プラッツは考えを変えて、1989年の瓶詰めの前には2度目の濾過を省略する決定をしたし、2002年には、彼の息子で経営者のジャン=ギヨーム・プラッツがすべての濾過処理をやめた。その成果は飲んでみれば明らかである。
1950年代、1960年代はモンローズの後塵を拝してきたが、1980年代に入ってボルドーで最も人気の高いワインの1つになっていたのである。コス・デストゥネルは、例えば1993年、1992年、1991年といった困難なヴィンテージで特に成功してきたことにも注目しておきたい。所有者は1990年代後半に変わったが、このシャトーはいまだに非のうちどころなく経営されている。