アンリ ジロー オマージュ オー ピノ ノワール
「オマージュ オー ピノ ノワール」は、シャンパーニュ アンリ ジローが原点回帰にフォーカスした新たなキュヴェ。収穫時期になると果皮表面に金色の粉が輝くことから、ピノ ノワールはアイ村ではプティ ドレ(金色の、金箔を貼った)とよばれ、キリストの最後の晩餐の聖杯に選ばれる栄誉を与えられました。アンリ ジローでは、今こそシャンパーニュの造り手は、このピノ ノワールがそれに相応しい位に引き上げる時であると考え、あえてブラン ド ノワールではなくオマージュ オー ピノ ノワールと名付け、このワインにオマージュを捧げました。
醸造: オークの小樽で10~12か月間熟成。さらに6か月ゆっくりと熟成することで複雑性をもたらします。瓶詰め後36か月余りの瓶内熟成。リザーブワイン比率40%
テイスティング コメント
明るく濃いゴールド。香りは熟したアプリコット、ピーチ、リンゴ、蜂蜜のアロマにドライフラワー、スパイスのヒント。そしてバニラ、トースト、繊細なブリオッシュの香り。同時にチョーク、ミネラルのニュアンスも感じる。味わいは豪勢でリッチ。泡のキメ細かさを感じながら真っすぐな芯の強さを感じ、純粋で、活き活きとしている。ピノ ノワール100%だが重心はさほど低くない。ミネラルを含みドライで、フルーティーさがうまく共存する。成熟した果実味、アフターの余韻は長くフレッシュな酸の余韻が心地よい。合わせるお料理は、白身魚のフリットやムニエル、フォアグラ、軽い肉料理や魚介類のバターソース、鶏肉料理など。
2021年12月試飲
シャンパーニュ アンリ ジロー
アンリ ジローの歴史は、17世紀初頭に遡ります。ルイ13世統治下の1625年、創業者のフランソワ エマールがシャンパーニュ地方でも良質なブドウの産地として有名なアイ村に畑を手に入れました。これが、現在のアンリ ジローのシャンパーニュが高い評価を受ける大きな理由となります。
10世紀以前から、石灰質の土地であるシャンパーニュ地方は、シャルドネやピノ ノワールなど良質なブドウを生み出す地として知られていました。中でもアイ村のピノ ノワールは評価が高く、17世紀にシャンパーニュ造りが始まった頃には、多くのメゾンがアイ村産のピノ ノワールを欲しがったといいます。特に熱心だったのが法王や王族で、歴史の証人灯として、今もアイ村にはフランソワ1世やアンリ4世の圧搾場跡が残っています。ちなみに、アンリ4世は「アイ卿(Lord of Ay)」と呼ばれ、アイ村の歴史のひとつとなっています。
16世紀初頭から、アイ村はシャンパーニュ地方において、ワインのAOC(原産地統制名称)として認定。現在、シャンパーニュ地方にある323のクリュ(区画)のうち、グラン クリュに認定されているのは17のクリュ。アイ村は、全てのクリュがグラン クリュに認定され、その高品質のブドウは、プレステージ級のシャンパーニュにおいて、もはや欠かせないものとなっています。アンリ ジローは、アイ村に約8haの自社畑を所有しています。
もちろん、アンリ ジローが現在のような高い評価を受けるシャンパーニュを造るようになるまでの道は、決して平坦なものではありませんでした。アンリ ジローのシャンパーニュがさらに進化したのは、20世紀の始めの頃のことです。マルヌの戦いに騎兵として参加していたレオン ジローが、エマール家の娘と結婚したことが現在のアンリ ジローにとって大きな転機となりました。レオン ジローはシャンパーニュ造りに愛情と情熱を持っていた人間で、当時、フィロキセラにより壊滅状態にあったブドウ畑を、彼自身の研究と絶え間ない努力によって復興させました。それは特定のアメリカの苗木を接木するという、当時としては最先端の技術でした。そして現在、12代目のアンリ ジローは、彼の精神を受け継ぎ、シャンパーニュのさらなる向上を目指しています。
ワイン評論家ロバ—ト パーカー評
「ほとんど人に知られることのないこのドメーヌは、最高のシャンパン ハウスだろう。このハウスのシャンパンは、むしろ蜂蜜味のあるブルゴーニュ ブランに近い。伝統のオーク樽で熟成されたプレステージクラスの『フュ ド シェーヌ』はクリュッグのような後味を残すが、より酸化度が低いため、強いボディーを感じさせる。(中略)このハウスのNV(ノン ヴィンテージ)シャンパンは、NVのシャンパンの中でも最高峰の一つといえる」と語っています。繊細にして芳醇、エレガントな飲み心地のシャンパーニュ、アンリ ジローは、創業以来380年の時を経て、また新たな歴史のページを記したといえるでしょう。アイ村のピノ ノワールの魅力が存分に味わえる類まれなるシャンパーニュ、それがアンリ ジローなのです。
アンリ ジローのシャンパーニュ造りとその個性
繊細にして芳醇、奥深さと複雑性を兼ね備え、味と香りの奥からフィネスが感じられる・・・それが、アンリ ジローの個性。一流老舗メゾンが集まるアイ村に本拠地を置き、ブドウ本来のポテンシャルを大切にするシャンパーニュ造りを心がけています。その唯一無二の味を支えているのは、なんといっても良質のブドウにあります。アンリ ジローがアイ村に有するブドウ畑は約8haで、それらはすべてグラン クリュに格付けされています。
栽培されるブドウの種類はピノ ノワール70%、シャルドネ30%。ブドウ本来のピュアな味わいを生かしているのが、今も頑固なまでに守り続ける伝統製法です。ブドウはすべて手摘みで、収穫されたブドウは酸化を防ぐため、すぐに醸造所へ運ばれます。そして不純物は完全に取り除かれ、プレス機にかけられます。特筆すべきはこの圧搾後の処理。1990年以来、アンリ ジローでは、シャンパーニュ地方において唯一、低温浸透法のシステムを導入しています。(低温浸透法・・・ブドウジュースが圧搾されて出てくると、特別なコンプレッサーによってゆっくりと10度まで温度を下げるシステムのこと)
こうすることで、衛生面において有益なだけでなく、同時に雑味成分とブドウジュースが完全に分離するなど、多くのメリットが得られます。そしてその後、シャンパーニュに複雑なアロマをもたらすため、特別にあつらえたアルゴンヌの森産の樫の樽でゆっくりと発酵させます。この特別なオーク樽を使うことで、シャンパーニュにグレープフルーツやバニラ、ココナッツといった複雑な香りが生まれるのです。ラインの中でも、メゾンの哲学が最も反映されているのが『フュ ド シェーヌ』。1年間オーク樽にて熟成、7〜8年の瓶内熟成の後、澱引きも手作業によって丹念になされるこの1本は、まさに「至高」のシャンパーニュといえます。