シャトー ブラーヌ カントナック 2016
マルゴー、カントナック村のクリュ クラッセ第2級。熟成も比較的早く、マルゴーワインらしいソフトでしなやかな味わいで人気の高いワインです。
評価
2016VT ジェームス サックリング: 96点獲得
シャトー ブラーヌ カントナック
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
ブラーヌ=カントナックは、ボルドーでも最も名の知られたワインのつくり手の一族が所有している。リュルトン家が住む地味なシャトーは、ブドウ栽培の歴史上18世紀初めにまでさかのぼることができる。19世紀に、ワインの名前(バロン・ド・ブラーヌ)にもなったブラーヌ男爵が所有者であった頃のこのシャトーは、傑出した評判を得ていた。現在ムートン・ロートシルトと呼ばれるポイヤックの有名シャトーを所有していたこともあるブラーヌ男爵は、非常に尊敬されたワインのつくり手であり、強固な政治的人脈を持ち、1855年の格付けの際は、それほどの水準のワインを生産していないとの異論があったにもかかわらず、ブラーヌ=カントナックは二級に格付けされた。現在、グラーヴとアントル=ドゥー=メールにかなりのシャトーを持つリュルトン家は、ワインづくりにたずさわる一族としてはこの地区最大である。
メドック最大のシャトーの1つであるブラーヌ=カントナックの広大なブドウ畑は、カントナック村の西、ジロンド河からはかなり内陸に入ったところにある。生産量が多いため、ブラーヌ=カントナックのワインは世界中で商業的な成功を収めている。しかしながらここのワインは凡庸で、特に1967年から1981年にはそれが顕著だった。不思議なことに、この時期のブラーヌ=カントナックの仕上がりには明らかに難があるのに、大半のワイン評論家はそれを指摘せずに目をつぶった。このスランプ期にいちばん目立っていた問題は、ワインが軽すぎることと、農家の裏庭のようないやなにおいがしばしば感じられたことだ。推測でしかないが、こうした問題が起きたのは、ブドウの選別が不十分だったり、また、セラーの管理がずさんで非衛生的だったために違いない。
もっとも、出来のばらつきは、劇的に改善され、品質のレベルは回復した。ブラーヌ=カントナックのワインは、外向的で果実味に富み、やわらかなスタイルにつくられており、15~20年は持ちこたえるが、若いうちから気軽に楽しめる。
一般的な評価
かつては繰り返し期待はずれのシャトーだったが、復興期を迎えている。1990年代後半以降、ブラーヌ=カントナックは二級という格付けにふさわしい品質を取り戻し、1995年ヴィンテージからずっと、そのワインはますます強さを増している。幸い、若きアンリ・リュルトンは妥協をまったく許さないワインづくりに全力を傾けている。こうした傾向は比較的最近のものだが、ブラーヌ=カントナックは、ボルドー全体とは言わないまでも、マルゴーの新星の1つである。急上昇する品質に、価格はまだ追いついていないので、消費者は覚えておくべきだ! 2003年時点で、ここのワインは、ボルドーの格付けシャトーのワインの中で最もお値打ち品の1つである。