パゴド ド コス 2017
シャトー コス デストゥルネルが94年から造り始めたセカンド銘柄。ファーストよりは軽めですが、緻密度の高さ、味わいの深みとしなやかさはしっかりと受け継いでいます。
テイスティング コメント
紫がかったガーネット。香りはブラックチェリー、ラズベリー、カシスのアロマ。加えてクローブや炭、スモーキーなニュアンスが漂いアニス、タバコ、スパイシーなオークのノートが混ざり合う。味わいはなめらか。シルキーなタンニンと穏やかで上品な酸がバランスよく、しっかりとした骨格を形成。カチっというよりはやさしく繊細でスマート、優美な質感が印象的。時間の経過と共に風味に柔らかさが増していく。ゆったりと広がる果実味、綺麗な余韻が広がる。
合う料理 ローストビーフ、赤身肉のジビエ、ビーフシチュー、チーズであればゴーダやエダムなどのハード系。
2022年12月試飲
シャトー コス デストゥルネル
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
コス・デストゥルネルは(驚いたことに、コスはsを「ス」と発音するのだ)、1990年代半ばにベルナール・タイヤン・グループに売却され、その後スイスの大事業家ミシェル・レビエに転売されたが、それまではブリュノ・プラッツの見事な管理のもとで、サン=テステフでは最高の評価を得ていたものだ。1982年から1996年までのワインは急速に力をつけてきたし、ほとんどのヴィンテージでメドック最上のワインを生産するだろうと期待できたのである。
シャトーはアジア風のパゴダのような外観で、ポイヤックとの村境のすぐ北、その著名な隣人ラフィット・ロートシルトを見下ろす丘の背にある。メドックにしては珍しく、コスはブレンドに使うメルロの比率が高いことと(40%)、新樽を使う比率が突出して高いこと(60~100%)が他と一線を画す特徴だ。この、オー=メドックでは最も高い部類に入るメルロの比率が、最近のヴィンテージに目立つ、肉づきの良い、豊かな舌触りという個性の元である。
1990年代後半まで経営者であり所有者でもあったブリュノ・プラッツは、新しいワイン技術を取り入れる前衛的なつくり手に属した。このシャトーは、ボルドーの主要なシャトーの中では数少ない、樽熟成前と瓶詰め前の2度濾過処理することを金科玉条としているシャトーの1つだったのだ。しかしながら、プラッツは考えを変えて、1989年の瓶詰めの前には2度目の濾過を省略する決定をしたし、2002年には、彼の息子で経営者のジャン=ギヨーム・プラッツがすべての濾過処理をやめた。その成果は飲んでみれば明らかである。
1950年代、1960年代はモンローズの後塵を拝してきたが、1980年代に入ってボルドーで最も人気の高いワインの1つになっていたのである。コス・デストゥネルは、例えば1993年、1992年、1991年といった困難なヴィンテージで特に成功してきたことにも注目しておきたい。所有者は1990年代後半に変わったが、このシャトーはいまだに非のうちどころなく経営されている。