シャトー シトラン 2010
テイスティング コメント
深みのある濃いガーネット。粘性は中程度より高め。香りにはブラックベリーやカシスなどの黒系果実、ブラックペッパー、マッシュルーム、杉、樽由来のオークの香り。トーストやコーヒーなどの香ばしさに加え、杉や微かにミントの香りが清涼感を与える。他にバニラ、タバコ、土のニュアンス。アタックはソフトでなめらか。丸みのある柔らかな口当たりで果実味が豊か、ふくよかなボリュームある味わい。肉付きが良く、タンニンが詰まったシルキーな舌触りでしっかりとした構造を持つ。酸も穏やかで調和がとれており、果実味と香ばしいオークのノートが一体となる。複雑、かつバランスがよく、広がり豊かなフルボディ。コクとともにしなやかさを併せ持ち、エレガントな余韻が続く。価格面からみても非常にお買い得な1本である。
シャトー シトラン
クリュ クラッセに匹敵するクリュ ブルジョワ
13世紀まで遡ることができる、メドックの中でも長い歴史を持つ「シャトー シトラン」。クリュ ブルジョワとして格付けされたのは1932年。その後、第二次大戦後の1945年以降は所有者を変えながら、畑の全面植え替えや厳しい選別、新樽比率の向上などの改革を経て目覚ましく品質が向上。2003年にはブルジョワ スペリュールへと昇格を果たしています。パーカーも「クリュ ブルジョワ」の中でも最上級一つ」と評するなど、現在、その評価はクリュ クラッセに匹敵するとも言われています。
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート パーカーJr.著より抜粋
日本企業による買収から10年(1987年から1997年)で、このシャトーのワインの品質質は急上昇した。この成功にもかかわらず、シトランは精力的なジャック・メルローが経営するソシエテ・ベルナール・タイヤン社に売却されてしまった。セラーの修復、新しい所有者の肩入れ、新樽比率の引き上げ、選別をより厳密にしたこと(その結果としてセカンド・ワインを導入したこと)、そして総合的な優れた運営によって、最近数年間にわたってすばらしいワインを生み出すようになった。批判すべきことがあるとすれば、新樽の使用率を上げたために、ワインに唐突で、いぶしたような、ほとんど焦げたような特徴を与えたことだろうか。繊細さと微妙を持つクラレットを好んでいた人たちは、この派手な力強さには気をそがれてしまう恐れがある。
それでも、新しいヴィンテージは10年まではよく熟成するだろうし、シトランが以前に生産したどのワインにも増して著しく興味深く、心地よいワインである。伝統的で暗い感じのシャトー・シトランの瓶から、新しいデザイナーによる人目を引くラベルのついたラベルに替わったことで、値段がじりじり上がったことも指摘しておこう。ここはブルジョワ級のシャトーでも最上級の1つで、ワインはしばしば格付けシャトーをしのぐ。2000年、1996年、1990年、1989年といったヴィンテージは最高級である。