フランソワ・ゲ・エ・フィス アロース・コルトン 2007
【テイスティング・コメント】
オレンジがかったガーネット。粘性は中程度からやや高め。香りにはラズベリーやチェリーのコンポートなどの甘い果実香に牡丹、ペッパー、ハーブ、リコリスのノートが混じり合う。樽香は強すぎず白檀やコーヒーを思わせる上品な香り。そして紅茶やジャスミンティー、なめし革、トリュフ、茸、シナモン、腐葉土などの熟成香が続き表情が豊か、複雑性に富む。アタックはソフトでなめらか。果実味はエキス分が充実し、キメ細かなタンニンと豊かな酸味が綺麗に溶け込んでいる。旨みが凝縮した心地よい甘酸っぱさと熟成による複雑味が絶妙のハーモニーを奏でており、華やかな含み香ながら味わいはドライに仕上がっている。ストラクチャーがしっかりとした堅牢なつくりながらピュアさ、そして気品が感じられ、まろやかなコクと優雅で長い余韻をもつ。合わせるお料理は、赤身肉はもちろん鶏肉のロースト、ベーコンと茸のソテー、寿司、エスニック料理、チーズであればウォッシュタイプがおすすめ。
※2017年1月試飲
■フランソワ・ゲ・エ・フィス
ショレイ・レ・ボーヌに本拠を置く造り手・フランソワ・ゲ。彼は7代目となる職人肌のヴィニュロンです。彼のワインは、華美な装飾がなく、「伝統的で普遍的な美しさ」を感じることができます。昔からの伝統を重んじる造りですが、現代でもなぜか古めかしさを感じない。静粛な「美」であり、いつの時代にあってもやすらぎを覚えるような、そんな時代とともに価値が落ちることのない存在であると認識できます。力強さと、繊細な果実味との融合が素晴らしいのです。
7世代続く伝統のマセラシオン・ショー。最初の発酵は7度くらいでの低温発酵、次に最高35度まであがるような発酵をする秘伝が、ムシュー・ゲのワインをかたち造ります。まさにこれは職人の仕事です。構成の頑固さを最大限に表現したムシュー・ゲのワインは、若くして味わうときにも今の良さを十分に味わえます。
また、ブルゴーニュでは数少なくなりましたが、自身の地下蔵で飲み頃になってから出荷するという姿勢を、基本的には貫いています。バック・ヴィンテージのストックが豊富で、時々そのワインを飲む機会に恵まれますが、10年、20年経っていたとしても、新鮮さ、あでやかさを失うことがない、本物の「古酒」であることに驚かされます。