シャトー・ド・ムルソー ムルソー・デュ・シャトー 2014
グラン・シャロン、メ・シャヴォー、ドレッソール、ラルモー、スー・ラ・ヴルの5区画からのブドウを区画別に発酵、熟成させてブレンド。口の中では、心地良い果実の厚みとクリスピーな酸が見事に調和し、オレンジピールと白胡椒のタッチを感じる余韻が楽しめます。
熟成:バリック12~15ヵ月(新樽35%)
【テイスティング・コメント】
グリーンを帯びた淡いイエローにシルバーのトーン。粘性は中程度。香りにはシトラスやマンゴー、洋梨、リンゴのコンポート、菩提樹を思わせる凝縮したアロマに、スパイシーかつスモーキーなオークの香りがアクセント。バニラや焦がしキャラメル、トースト、バター、アーモンド、ヘーゼルナッツの香り。そしてややフリンティな香り、火打石や鉱物的なニュアンスを持ち複雑性がある。アタックは生き生きとしていてなめらか。厚みのある果実味と新鮮な酸味がバランスよく交わり、味わいはリッチでオイリー、それでいてクリスピーな質感を兼ね備える(現時点では。フレッシュで飲むには十分に美味しい)。非常に表現力が豊かで伸びやかに広がる風味、ストラクチャーがしっかりとした飲み応えがある。ミネラル感が充実し逞しくも、余韻は長くエレガント。合わせるお料理は、バターを使った白身肉や魚のソテー、オマールや伊勢海老のソース添え、寿司、天ぷら、ムニエル、レモン添えの焼き魚など。また生ハムやフォワグラ、エポワスチーズとの相性も良い。
※2017年5月試飲
■シャトー・ド・ムルソー
ボーヌの街から南に8km下るとグラン・クリュ街道沿いに見えてくるのがシャトー・ド・ムルソー。以前は「建物こそ立派だが味わいに関して特筆すべきことはない造り手」というイメージを持つ人もいましたが、現在のシャトー・ド・ムルソーは以前とは全く別物であると断言できます。
変化のきっかけは、2012年にフランスの著名な資産家であり世界2位の流通企業カルフールの筆頭株主でもあるアレイ・ファミリー直系のオリヴィエ・アレイが新オーナーに就任したことです。彼はその潤沢な資金をもとに大きな改革を行いました。
まずブシャール・ペール・エ・フィスのCEOを務めたステファン・フォランを、ドメーヌの総指揮をとる新ディレクターに招き入れました。その後、今まで使用していた樽を一掃し、樽メーカーをタランソー、フランソワ・フレール、セガン・モローのみに変更、3年以上経過した樽の使用をやめました。続いてブルゴーニュにまだ3台しかない最新の光学式選果台を導入。『雹害に悩まされた2012年~2014年の各年で使用したところ、驚くほど効果があった。我々の2013ヴィンテージが絶賛されたのは間違いなくこのマシンのおかげだ』とステファンは語ります。
また、赤ワインの醸造に関してもステンレスタンクとトップキュヴェ用のオークの桶を新調。全て手摘みによって収穫し、コンベヤーを使って慎重にタンクに運ぶようにしたため、過度のフィルタリングが不要となり、わずかな清澄・濾過を行うのみに変更しました。こうした醸造工程の徹底的な見直しは全てピノ・ノワールのテクスチャーのためです。なぜなら彼は「いかに優しくブドウに接するか」がワインの質感を決めると考え、ピノ・ノワールにおいてはフレーバーと並び、きめ細かいテクスチャーこそが重要だと確信しているからです。
ライバルはムルソーの名手、ラフォンやルーロたち
こうした短期間での品質の向上は見逃されるはずもなく、「2012年以前のワインとは全く別物。目を見張るほどの素晴らしいワインが存在する(WA誌)」、「以前は衰弱していたが、2012年以降赤も白も印象的な品揃え(アラン・メドー)」、「ブルゴーニュの隠れたダークホース(ジャンシス・ロビンソン)」と各評価誌から称賛を受けています。
もう一つ忘れてはならないのがシャトー・ド・ムルソーの持つ畑のポテンシャルの高さです。その長い歴史の中では、領地の拡大に伴い優れた畑を手に入れてきた背景があり、現在は北のコルトンから南はピュリニー・モンラッシェまでの計60haを所有。そのうちプルミエ・クリュとグラン・クリュが23haと3分の1以上を占めています。ムルソーにおいては特筆すべき1級畑であるシャルムの最大の所有者(4.7ha)であり、その半数以上が特に優れているとされる上部にあるということも見逃せません。
『我々は目標とするレベルの半分のところまできた。ネゴシアンはもう相手ではない。我々のライバルはラフォンやルーロたちだ』と語るステファン・フォラン。彼らに肩を並べる日はそう遠くないとWA誌から評されるシャトー・ド・ムルソーの今後に、世界中の注目が集まっています。