シャトー・トゥール・デュ・パ・サン・ジョルジュ 2010
樽(新樽30%、1年樽50%、その他)で15ヶ月熟成
【テイスティング・コメント】
深みのあるダークレッド。粘性は高め。香りにはブラックチェリーやプラム、ミント、ブラックペッパー、オリーブ、樽からくるバニラや杉、お香、トースト、コーヒーのノート。そしてなめし革、トリュフ、湿った石のニュアンス。熟成による腐葉土や野性味があらわれ始めており複雑性が感じられる。アタックはやや強くなめらか。アルコール感のあるしっかりとした酒質ながら味わいは丸く柔らかなテクスチャー。こなれたタンニンが存在し、果実味と穏やかな酸味とのバランスがよい。コクがあるが重く残らずエレガントな仕上がりで、アフターに芳しいオークのフレーヴァーが持続する。タンニンが豊かで長期熟成が期待できるうえ早くから美味しく楽しめる。すぐ飲むのであれば早めの抜栓かデカンタージュを。(私的:バキュヴァン無しで程よく酸化した二日目が好み)合わせるお料理は、フィレ肉や鴨肉のロースト、ジビエ、茸料理、サーモン、焼いた川魚料理など。
※2017年10月試飲
■シャトー・トゥール・デュ・パ・サン・ジョルジュ
元オーゾンヌの醸造責任者 パスカル・デルベック氏
シャトーは、サン・ジョルジュ村の粘土石灰質土壌からなる南向きの斜面にあります。ロバート・パーカーやデヴィット・ペパーコーンに、天才とかワイン造りの名人などと高く評価されており、かつてオーゾンヌやベレールの支配人を務めたパスカル・デルベックと彼のスタッフによって行われています。
コンクリート発酵槽とステンレスタンクを外気の温度によって使い分けます。バリック(新樽)30%、白ワインを3ヶ月発酵させたバリック20%、1年樽50%で、15ヶ月熟成します。熟したプラムやドライイチジクを思わせる果実味とフレーヴァーに富み、やわらかな口当たりです。こなれたタンニンはまだしっかりと力強く、部分的な新樽での熟成によるボディと果実味のバランスがとれています。
フランスAOCワイン事典(発行者 株式会社 三省堂)より抜粋
■サン・ジョルジュ・サン・テミリオン
リブルネ地区と呼ばれるドルドーニュ河右岸地区は、AOCボルドーを除く13のAOC赤ワインを産出している。最も栽培面積が広いのはAOCサン・テミリオンであるが、この産地の北側に、サン・テミリオン衛星地区と呼ばれる4つのAOC、すなわち、サン・ジョルジュ・サン・テミリオン、モンターニュ・サン・テミリオン、ピュイスガン・サン・テミリオン、リュサック・サン・テミリオンの生産地が連なっている。
サン・ジョルジュ・サン・テミリオンは、バルバンヌ川を挟んでサン・テミリオンの丘の対岸にあり、4つの衛星地区の中で、最もサン・テミリオンの畑に近い。また、サン・ジョルジュ村には、モンターニュ・サン・テミリオンの畑もあるため、この村からは2つのAOCワインが産出されている。
リブルネ地区のワイン生産の発展に大きな役割を果たしたドルドーニュ河は、フランスの中央山塊に源流を発し、ジロンド河と合流して大西洋へ流れ込む大河である。サン・テミリオン村から河の上流へ進むと、南西地方のワイン産地であるモンラヴェル地区やベルジュラック地区が広がっている。ドルドーニュ河は、19世紀末の鉄道開通まで、リブルネ地区や南西地方のワインをイギリスやオランダなどのヨーロッパの国々へ輸出するための重要な輸送路として活用された。