ドメーヌ ド ラ モルドレ リラック ルージュ ラ レイヌ デ ボワ 2016
クリストフの1番のお気に入りは、このワインでした。このアペラシオン最上のワインと言えるリラック レイヌ デ ボワは、古い樹齢の区画の葡萄を使っています。小石混じりの、粘土質白亜、粘土質石灰岩土壌です。100%除梗します。収穫量は、30hL/haです。温度管理の下、ステンレスタンクで30日の発酵と長い醸しをします。グルナッシュ ノワールはシラーと、ムールヴェードルは遅摘みのシラーと混醸することで複雑さが出ます。30%を樽(新樽でない)、70%をステンレスタンクで熟成させます。濃いルビー色、クレーム ド カシスやブラックベリーの甘い香りが感じられます。リッチな味わいでボリュームがあり、フルボディです。ピュアで長い余韻が続きます。
評価
2016VT ワイン アドヴォケイト: 93+点獲得
テイスティング コメント
紫がかった深いルビー。粘性は高め。香りにはプラムやブラックベリー、カシスリキュールなどの凝縮した果実香にラベンダー、リコリス、ハーブ、ブラックペッパーやクローブなどのスパイスのノート。そして軽いロースト香、バニラやコーヒー、香木の香り、紅茶、なめし革、砕いた岩のニュアンス。複雑性がありミネラルが洗練さを与えている。アタックはなめらかで継ぎ目のないシルキーな舌触り。艶っぽさ、質感がありキメ細かなタンニンが酸とともに綺麗に溶け込んでいる。純粋にして見事なまでの構造化。ふくよかな果実味が充実し味わいはリッチで、ボリューム感が楽しめる。ミネラルを含んでおり過熟感のないエレガントな仕上がり。口当たりがスムーズで、長く続く余韻を持つ。品質としてはかなりの上級レベル、あのシャトーヌフ・デュ・パプを彷彿とさせる。合わせるお料理は、グリルした肉料理や牛ステーキ、仔羊の煮込み、鶏肉の赤ワイン煮、ジビエ、すき焼きなど。チーズであればウォッシュタイプがおすすめ。
※2017年10月試飲(2014年ヴィンテージ)
ドメーヌ ド ラ モルドレ
リラック、タヴェル、シャトーヌフ デュ パプにおけるトップ ドメーヌ
伝説となった醸造家 クリストフ デロルム
ドメーヌ ド ラ モルドレは、1986年にフランシス デロルムによって設立されました。その後、1989年よりフランシスの長男であるクリストフが中心となってワイナリーを牽引するようになると、わずか10年ほどで南ローヌのトップ ドメーヌの一員として知られるようになりました。ロバート パーカーは、『ワイン アドヴォケイト』で、2001VTの「シャトーヌフ デュ パプ ラ レイヌ デ ボワ」に100点満点を献上し絶賛しました。
『ワイン アドヴォケイト』のタヴェル、リラックのトップスコアはそれぞれ93点と94点ですが、タヴェルではモルドレの「キュヴェ ド ラ レイヌ デ ボワ」が2011~2017VTまで連続して93点を獲得しており、トップ タイスコアを記録。リラックでもモルドレの「ラ レイヌ デ ボワ」の2007VT、「ラ プリュム デュ パントル」の2012VT、2016VTが94点を獲得し、トップスコアを記録しています(2020年8月12日現在)。こうして、瞬く間にスター生産者の地位を確立したクリストフでしたが、2015年、惜しまれながらこの世を去りました。
2017年に独立するまでローヌ担当だったジェブ ダナックは、『ワイン アドヴォケイト#221』で次のようにコメントしています。「2015年の6月10日の朝、クリストフ デロルムが52歳の若さで心臓発作によりこの世を去った事を知り、私はショックで落ち込んだ。(中略)彼は信じられないほど熱血的な人物で、何が何でも品質を追求していた」。
レミ ショーヴェが醸造を引き継ぎ新体制が始動
クリストフの築いた伝説は、彼の右腕として2010年から勤務しているレミ ショーヴェへと受け継がれています。また、クリストフの娘アンブルもドメーヌに参加しており、『ワイン アドヴォケイト#245』では、「まだ20代と若いアンブル デロルムのリーダーシップの下、タヴェルの歴史的なエステートは、様々な賞賛すべきワインを造り続けている」と評価されています。新体制でのスタートは、ドメーヌ ド ラ モルドレにとっても予期しないものではありましたが、リリースされたワインは、クリストフの掲げた品質第一主義の哲学を反映した素晴らしいものでした。『ワイン アドヴォケイト#227』は、「これらの2015年の樽サンプルを見る限り、このドメーヌは今でも信じられないほどの実力を持っていることは明らかです」とコメントし、「シャトーヌフ デュ パプ ラ レイヌ デ ボワ」の2016VTは、『ジェブ ダナック.com』で100点、『ワイン アドヴォケイト#239』で98点を獲得し、新生モルドレの実力を世に知らしめました。
「どんな年だろうと何があろうと、品質を第一に考えている」
ドメーヌ ド ラ モルドレのワイナリーは、タヴェルに位置しており、25kmほど離れたシャトーヌフ デュ パプのワインも、特別な許可を受けて同じセラーで醸造しています。この隣接したアペラシオンである、タヴェル、リラック、シャトーヌフ デュ パプのいずれも並外れた品質を備えたワインを生産しており、『ワイン アドヴォケイト』を始め、『ワイン スペクテーター』、『ヴィノス』、『デカンター』などの著名な専門誌や、ジェブ ダナック、ジャンシス ロビンソンなどの評論家によって毎年のように高い評価を獲得しています。
「ジャンシス ロビンソン.com」は、リラックについての説明文中で「ドメーヌ ド ラ モルドレは最高の生産者の一つ」と紹介しています。2019年に現地を訪問した際、新たにドメーヌを牽引する立場となりつつあるアンブル デロルムが言った「どんな年だろうと何があろうと、品質を第一に考えている」という言葉には、偉大な父の時代から変わらないモルドレの哲学が反映されています。
自然と生物多様性を重視した有機栽培が、最高の葡萄と最高のワインを生む
畑は現在58haを所有しています。以前からずっとオーガニック栽培を行っていましたが、2013年に正式にオーガニック認証を取得しています。ワインのバックラベルには、ABマーク、ユーロリーフが表示されています。他には、新たにHVE(Haute Valeur Environnmental 環境価値重視)のレベル3の認証を取得しました。これは、農業従事者のための環境認証で、3 段階に分かれている認証の中の最上のレベルに当たります。現在はビオディナミを実践、数年後の認証取得を目指しています。また、vigneron independent(自家畑、自家醸造を行う小規模な葡萄栽培者の団体)にも加盟しています。すべての畑の葡萄は手摘みで収穫し、厳しい選別をしてワイン造りを行なっています。「私たちの目的は、人と自然を尊重しながら、可能な限り最高の葡萄、そして最高のワインを皆様にお届けすることです。私たちが行うすべての作業は認定を受け、環境と生物多様性を尊重しているものとして承認されています。これらの認証を受けることは、私たちが自然と生物多様性を尊重していることを確かなものにするために必須だと考えています」。
評価
ロバート パーカーJr.「ワールド グレイテスト ワイン エステート」、ヒュー ジョンソン「ポケット ワイン ブック2019」のリラックとタヴェルのトップ生産者として掲載。
「デロルム兄弟は、その若さにもかかわらず、20年近くにわたりガール県のリラックのアペラシオンでは揺るぎのないリーダーであり、ワインの品質を前代未聞のレベルまで引き上げた。近代的な醸造と熟成を頼りに、ワインは力強くすらりとし、洗練され、繊細で芳しい個性があり(特に見事な白では)、粗野なところがなく、はっきりとした性格を持っている。彼らはさらにシャトーヌフ デュ パプにおいても、上品なワインの輝きを探求し続けることができた。」ベタンヌ&ドゥソーヴ「フランスワイン格付け」