ドメーヌ・ブスケ カベルネ・ソーヴィニヨン 2016
畑はトゥプンガトにあり、標高1,200mの水はけのよい砂と小石混じりの土壌です。収穫は手摘みで行います。発酵は、最高30度に管理しながら12日間、マセラシオンは30日間行ないます。フレンチオークの樽とアメリカンオークの樽で6ヶ月、さらにボトルで最低4ヶ月熟成させています。
【テイスティング・コメント】
紫がかった濃いルビー。粘性は中程度より高め。香りにはラズベリーやカシス、プルーンなどの果実香、ドライハーブ、ブラックペッパー、そして樽由来のロースト香やナツメグ、コーヒーの香りが混じり合う。果実のアロマが豊かで若々しい印象もミネラルが洗練さを与えており調和がとれている。アタックはソフトでなめらか。濃縮感のある果実味ながら豊富なミネラルを含み香り同様の洗練さ、新鮮な酸とのバランスがよい。熟したタンニンが溶け込んだ丸いテイスト。その上で明確な輪郭が感じられ味わいはドライで、中庸のコクとともに爽やかさが印象に残る。過熟感のないエレガントスタイルのフルボディ。杯を重ねる毎にその美味しさが込み上がる。合わせるお料理は、ローストビーフや仔羊のロースト、ビーフシチュー、馬刺し、ソースを使った肉料理、パスタなど。
※2018年1月試飲
■ドメーヌ・ブスケ
ジャン・ブスケは1948年に南フランスのカルカッソンヌで生まれました。ワイン農家の3代目の彼は、20年にわたる努力の結果、立派な葡萄園を育てあげ、商業的にも成功をおさめました。しかし、それで飽き足らなかった彼は、さらに優れた品質を追い求めるうち、理想の土地を探すため世界中のワイン産地を旅して回るようになり、アルゼンチンのメンドーサのトゥプンガトに辿り着きました。当時、メンドーサには、標高350mほどの場所には葡萄畑がありましたが、標高1,200mのトゥプンガトには葡萄の樹など1本もなく、ましてワイナリーなど存在しませんでした。「アルゼンチンに行くと言ったら、フランスではあんな国に行くなんて、とバカにされ、アルゼンチンに来たら、アルゼンチンの人からも、なぜこんな何もない場所でワイン造りをするんだ?フランスの地を捨ててまで、とバカにされました。ところが、始めはクレイジーだと言っていた人々が、今では真似しています」。何もない土地に葡萄を植えるところからスタートしたので、ワインができるまでには時間がかかりました。植えてからすぐにワインを造れる葡萄が収穫出来るわけもなく、お金を作るために、苗木を販売する仕事をしたり、土地を売ったりしていました。「5年目で初めて収穫できた時は、嬉しくて泣いてしまいました」。
標高の高い畑だからこそ生み出せるジャン・ブスケのスタイルは、エレガントでしなやかな奥深い味わいのワインです。畑の奥にはアンデス山脈が連なって、冷涼な気候と変わらない新鮮な空気をもたらします。この環境のおかげで、収穫期の葡萄の成熟は平地より遅く、その分ゆっくりと熟すため、糖分だけでなく「旨み」となる様々な成分(酸、ミネラル等)が豊富に含まれていきます。気温の高い場所で同じように摘み取りを遅くすると、葡萄は過熟気味になってしまいバランスを失います。涼しく風通しが良いため全く農薬の必要がないこと、またさまざまな土着品種のテイスティング、降雨量や土壌の調査を行った結果、そこは正に彼が確信する理想の土地でした。
葡萄の苗は、マルベック以外はフランスから持ってきたものです。マルベックだけはアルゼンチンの苗の方が適していたからです。当初、涼しいトゥプンガトはピノ・ノワールとシャルドネに適していると考えていたそうですが、植えてみたらカベルネ・ソーヴィニヨンも、マルベックも素晴らしい葡萄になりました。
醸造は、トゥプンガトのセラーで行っています。彼らのワイン造りは、飽きることなくベストな醸造法を試し続けています。そのワインの品質は明らかに現在進行形で向上してきています。ブレンドは全て葡萄の段階で行います。ワインになってからブレンドするよりも、よりそれぞれの葡萄の個性が調和し、味に一体感が生まれます。ジャンのラングドックの経験から、そうしています。赤のマセラシオンは、いくつかの方法で行います。①コンクリートタンクでルモンタージュ、②400Lの樽を回転させる、③大樽で手とポンプを使用等。その後、それらをブレンドします。
ジャンは、ドメーヌを引退、新たに150haの畑を買って葡萄栽培をしています。ドメーヌは、セールスを担当していたラビッド・アメリとアンヌ・ブスケ、そして義理の兄弟が引き継ぎました。ワイン造りは、昔からいる常駐のワインメーカーが中心になって行い、ジャンもブレンドチームの一員として加わるため、品質は変わりません。