ヨハネスホフ・ライニッシュ ピノ・ノワール 2016
まさにピノ・ノワールのお手本とも言えるようなワイン。熟した果実味がたっぷりと感じられます。オークの大樽で熟成。暑い季節には少し冷やし気味でも美味しいです。
テイスティング・コメント
輝きのある紫がかったルビー。粘性は中程度。香りには新鮮なラズベリーやストロベリー、プラムなどの果実香に赤い花、ポプリ、ドライハーブ。そして木樽由来の上品な樽香、クローブやシナモンなどのスパイスの香り、軽いロースト香がアクセント。アタックはなめらかで軽やか。エキス分が充実し辛口にしてほんのりと甘く、純粋かつフェミニンな個性が光る。フルーティーだが酸がしっかりとしており、味わいがぶれずにエレガントなスタイルに仕上がっている。ミディアムボディで親しみやすく、目の覚める様な鮮やかさと、うっとりとするアフターが印象に残る。合わせるお料理は、仔羊や鴨肉のロースト、鴨肉と葱の鍋、スモークサーモン、手巻き寿司、パスタ、茸料理など。
2018年10月試飲
ヨハネスホフ・ライニッシュ
ウィーンの30kmほど南にあるテルメンレギオン地区は、その名から想像できる通り、古くから温泉地帯でウィーンの人々の行楽地でした。ワイン造りの歴史は古く、12世紀にシトー派が最初の葡萄を植えました。緯度はちょうど47度、気候や土壌もブルゴーニュに似ていることから、オーストリアのコート・ドールとも呼ばれています。ライニッシュ家は、この地域の中ほどにあるタッテンドーフTattendorfの町で1923年にワイン造りを始めました。現当主のヨハネスは4代目、2人の弟と妹、母の5人家族で営むワイナリーです。幼いころから父が葡萄畑で働く姿を見て自然に家業に加わったヨハネスは、1997年から栽培・醸造の指揮をとっています。ナパ・ヴァレーなどのニューワールドのワイン産地での経験を積んだことが、逆に自分のルーツを意識することにつながりました。
ワイン造りの哲学
もともと自然な栽培を心がけていたライニッシュ家ですが、現在はビオディナミを取り入れた有機農法で葡萄を栽培し、その8割は野生酵母で自然に発酵させています。ヨハネスは樽の役割を非常に重視しており、オーストリアの樽職人と相談しながら木材を選んで、最低36カ月間、敷地内で乾燥させています。ライニッシュ家の土地の日光、雨、風を受けることでこの地になじみ、また青臭いタンニンは乾燥によって除去され、必要なタンニンだけが残るそう。ヨハネスは、自らをワインメーカーでも生産者でもなく「ワイン・コンパニオン(ワインの友達)」と呼ぶことを好みます。『ワインを造るのではなく、それぞれの畑の葡萄の果実味やフレーバーがワインになるのを手助けするのが自分の役割』が信条です。
畑とワイン
総面積40ha。ライニッシュ家の畑は、ワイナリーのあるタッテンドーフの町と、ウィーン寄りのグンポルズキルヒェン周辺に広がっています。ハンガリーから来る温かい風をウィーンの森が閉じこめるため、日照時間は2000時間とオーストリアで最も温かいのが特徴です。葡萄はゆっくりと完熟し、たえず循環する空気が病害から守ってくれるそうです。
タッテンドーフ周辺・・・温泉地帯の断層が南北に走る独特の地層で、土壌は沖積世の砂礫のためブルゴーニュ系品種に適しています。
グンポルツキルヒェン周辺・・・標高260〜400m、肥沃な土壌のこの地域では、古くから白葡萄品種ツィーファンドラーとロートギプフラーの名産地として知られています。今ではあまり見かけることのない品種ですが、ライニッシュ家では大事に栽培しています。