ジャック・カシュー・エ・フィス ヴォーヌ・ロマネ レ・ジュネヴリエール 2015
当主パトリスの夫人の実家からもたらされた村名畑。小石が多く見られ、村名畑の中ではもっとも成熟が早い。ラズベリー、ダークチェリー、カシスなど果実の香りが華やかに広がり、口の中でも果実味の凝縮感が高い。力強さの中にもエレガントさを感じさせる優美なワインです。
平均樹齢:40年。 熟成:オーク樽17ヶ月。
テイスティング・コメント
エッジが紫がかった濃いルビー。粘性は高め。香りには野性味のあるラズベリーやダークチェリー、赤スグリ、アイリス、ポプリ、ブラッドオレンジ、そして上品な樽香にバニラやスモーク、シナモンなどのスパイシーなヒント。ボリュームのある香りで、さらに赤紫蘇のような鮮明さ、ミネラルのニュアンスが加わる。口に含むとなめらかで、球体的なテクスチャー、凝縮した果実味が瞬く間に広がり、上品な中にもプルっとした豊かさが何よりも印象深い。柔らかなタンニンと、酸度はやや低く親しみやすいもので、力強さとともにエレガントさを感じさせる。現時点で素直に美味しく、二日目にはオイリーさも増し官能的なアフターへと続く。合わせるお料理は、仔羊や鴨肉のロースト、鴨鍋、牛肉の赤ワイン煮、赤身マグロの醤油漬けなど。
2018年10月試飲
ジャック・カシュー・エ・フィス
ジャック・カシューの名前が挙がると真っ先に思い浮かぶクリマは、ヴォーヌ・ロマネ1級のラ・クロワ・ラモーでしょう。ロマネ・サン・ヴィヴァンに隣接する0.6ヘクタールのこのクリマはカシュー家のモノポールというわけではありません。ほかにも2軒のドメーヌが所有していますが、カシューを代表するクリマとしてよく知られています。もともとサン・ヴィヴァン修道院の畑として、今日のロマネ・サン・ヴィヴァンに含まれていた区画であり、80年代半ばにはジャック・カシューが特級昇格をINAOに申請した経緯があります。ラベルに見える十字架(クロワ)はこのクリマの石垣上にあり、ヴォーヌ・ロマネにある5つの十字架のなかでも一番古いものだといいます。
94年にジャックは引退し、現在、ドメーヌの当主は息子のパトリスが務めています。眼鏡をかけた長身の彼は高校教師のような風貌で真面目一徹。クリマの特徴や樹齢などこと細かに記憶しており、それをわかりやすく説明します。
カシューが所有する畑の面積は合計6.7ha。ほとんどがヴォーヌ・ロマネですが、ニュイ・サン・ジョルジュとシャンボール・ミュジニーにも小さな区画をもっています。村名ヴォーヌ・ロマネはクリマごとに醸造し、5つの銘柄に分かれます。栽培はリュット・レゾネを実践。ブドウは完全に除梗し、ステンレスタンクを用いて醸造します。11〜15度の温度で1週間の低温マセレーションの後、自生酵母による自然発酵。その後、17ヶ月の樽熟成を施します。新樽率は村名で3分の1、一級以上は100%と高めですが、パトリスの造るワインは全体に果実の凝縮度が高いため、新樽を受け止めるには十分です。
リッチな果実味を主体とするモダンな造りですが、各クリマの特徴を見事に引き出し、バランスがとてもよいものです。またベーシックなブルゴーニュやブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイでもたっぷりとした味わいがし、高い満足度を得ることができます。