シャトー・ラ・ラギューヌ 2006
テイスティング・コメント
エッジがオレンジがかった濃いガーネット。深みがあり、粘性は中程度よりやや高め。香りはラズベリーやプラム、カシス、イチジクのコンフィ、リコリス、そして土っぽさに、芳しいオークのノートが混じり合う。甘くスパイシーなバニラや白檀、杉の香り、トーストやコーヒー、チョコなどのニュアンスをもつ。スモーキーかつ熟した魅力的なブーケが鼻腔をくすぐる。口に含むとソフトでなめらか。角のとれたまろやかな口当たりで、果実味は広がりがある。濃縮感があるが重すぎず、優れた果実の純度と質感のあるしなやかさが印象に残る。酸味は穏やかで飲みやすい。ミディアムからフルボディで、混じり気のない甘美なる余韻へと続く。合わせるお料理は、牛やラム肉のロースト、ビーフシチュー、すき焼き、焼き肉、茸料理、コクのあるチーズなど。
2019年1月試飲
シャトー・ラ・ラギューヌ
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
ラ・ラギューヌには、ボルドーの華々しい成功物語がある。1950年代、このシャトーはすさまじい荒れようだった。葡萄を植え替え、ワイナリーを再建し、1855年の格付けシャトーというエリートの一員の名に恥じない地位に返り咲かせようとするなど、困難すぎて無理だと、故アレクシス・リシーヌをはじめとする様々な有力バイヤーたちに一蹴されるありさまだった。ジョルジュ・ブリュネという起業家がここを買収し、畑を全面的に植え替え、今日メドックに置いて最先端を行くワイナリーを建てたのは1958年である。ブリュネは、巨額な投資の見返りを受ける前にこの地を去った。プロヴァンスに移り、そこでもまたシャトー・ヴィニュロールというワイナリーを一流に育て上げ、転売したのである。彼はラ・ラギューヌを1962年にシャンパーニュのアヤラ社に売却したが、同社はそれから今日まで、変わらぬ情熱でラ・ラギューヌの改善と経営に取り組んできた。最大の革新的なアイデアは(いまだに追従者が現れないが)、ワインを移し替える際、空気に触れないように、発酵槽から貯蔵樽のあるセラーまでパイプラインを敷設したことである。
ラ・ラギューヌは、ボルドーからメドックに向かって有名な県道2号線を走ると、いちばん最初に出会う格付けシャトーである。ボルドー市内から16km足らず。ブドウ畑は、ボルドーの南にあるグラーヴと似て、たいへんに軽い、砂礫に近い砂地である。ラ・ラギューヌは1964年、故ジャンヌ・ボワリを管理人に任命したが、女性をこの役職につけたシャトーはここが最初である。男性優位のボルドーにあって、革命的な進歩だった。男性が支配するワイン界の内輪にこそ入れなかったものの、彼女は、ボルドーきっての実直で有能な管理人であり、厳格、几帳面で、侮りがたいその人柄を軽んじる者はいなかった。1986年にジャンヌ・ボワリが亡くなってからは、娘のカロリーヌ・デヴェルニュが後を継いで管理を引き受けていたが、ティエリ・ブダンが引き継いでいる。
最高の時のラ・ラギューヌのワインのスタイルは、「ポムロール的」でもあり「グラーヴ」的でもあると評されている。ある高名な批評家(本書の著者)によれば「ブルゴーニュ的」でもある。これらの3つの形容はいずれも的を射ている。時には強すぎるヴァニラのようなオークやブラックチェリーのブーケのある、リッチで肉づきのよい、がっしりとしたワインになることもある。ラ・ラギューヌのワインは通常、10年目を迎える頃にはすっかり熟成するが、15年や20年は確実に持つだろう。ラ・ラギューヌの品質と力強さは、1966年から1990年にかけて、目に見えて向上した。葡萄の樹齢が上がるとともに、メドックの偉大な(そして驚くほど良心的な値段の)ワインの1つに数えられるようになっていった。とりわけ目覚ましいのは1976年から1990年の間で、上質なワインが数多く生み出されたが、残念なことに、1990年以降のものには興味をかきたてられない。