ドメーヌ・ジャン・グリヴォ ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・ルージュ 2015
特級エシェゾーの真上に位置する一級畑。小石だらけのやせた土壌であり、繊細でエレガント、しなやかな飲み心地のワインを生みます。
テイスティング・コメント
エッジが朱色がかった落ち着いたルビー。粘性は中程度。香りはクローブやシナモン、クミンなどスパイスの香りが豊かで、ラズベリーやプラム、ドライハーブ、森の下草、スモーキーなオークのノートが混じり合う。そして動物的なニュアンス、麝香やなめし革、茸などの熟成香が続き複雑さと奥行が増していく。口に含むとソフトでなめらか。ビロードのような舌触りで滲み出る旨み。気品があり、アルコール分とグリセリンが絶妙のバランスを保っている。溶け込んだタンニン、広がりのある質感と、瓶熟を経てしっかりとした構造が感じられ洗練された中にもコクがある。丸いテイスト、さも官能的で味わい深く余韻も長さも楽しめる。合わせるお料理は、仔羊や鴨肉のロースト、赤身マグロの醤油漬け、鴨の治部煮、ジビエ、ベーコン、茸のリゾットなど。
2018年12月試飲(2012年ヴィンテージ)
ドメーヌ・ジャン・グリヴォ
18世紀の末にまで遡る、ヴォーヌ・ロマネの由緒正しき造り手「ジャン・グリヴォ」。現当主、エティエンヌ・グリヴォの父が現在のドメーヌ名となっており、祖父のガストンは初めてディジョン大学で醸造学の学士を修めた人物です。今日、ドメーヌ・ジャン・グリヴォは全体で14haほどの畑を所有。本拠地のヴォーヌ・ロマネのほか、ニュイ・サン・ジョルジュにも数々のクリマがあります。これはエティエンヌの祖母、マドレーヌが婚資としてもたらしたもの。余談ですが、マドレーヌの旧姓もグリヴォだそうです(両グリヴォ家の間に血縁関係はないらしい)。ガストンの死去にともない、55年にジャンがドメーヌを継承。59年からワインの元詰めを始め、ドメーヌの名声を築きました。
エティエンヌがボーヌの醸造学校を卒業し、ドメーヌ入りしたのは82年。夫人はサヴィニー・レ・ボーヌの名門、ドメーヌ・シモン・ビーズのパトリックの妹マリエル氏です。若かりし頃、シャンボール・ミュジニーのクリストフ・ルーミエとビーズ家に試飲に出かけ、そこで出会ったマリエルに一目ぼれ。ワイン造りの家系の男とは結婚しないと決めていたマリエルを、何年もかけて口説き落としたといいます。
エティエンヌ・グリヴォの造るワインはじつにヴォーヌ・ロマネらしい。たおやかで、包容力があり、誠実な印象を受けます。まさにエティエンヌそのものの人物像を写し取ったかのよう。ヴォーヌ・ロマネのクリマはそもそもそのような性格だから当然としても、ニュイ・サン・ジョルジュのレ・プリュリエ、ロンシエール、オー・ブードまでヴォーヌ・ロマネ的なのは驚くかもしれません。ヴォーヌ・ロマネに近いオー・ブードはとくにその印象が強く、ニュイ・サン・ジョルジュにありがちな骨太で角張った様子がほとんど感じられません。ベルベットのような喉越しは、このドメーヌのワイン共通の特徴といえるでしょう。