シャトー グロリア 2012
テイスティング コメント
濃い赤紫 / ガーネット。香りはブラックチェリー、カシス、ブラックオリーブ、杉、スモーク香。トーストやダークチョコレート、タバコなど深みのある樽感。さらに森林や湿った土のニュアンス。味わいは円やか。肉付きのよいふくよかなボディにこなれたタニンの層。なめらかな質感でコクがあり、10年の歳月を経てもなお力強さがひしひしと伝わってくる。古き良きクラシカルなボルドー。まとまりのよいスタイルで、アフターには心地よい渋みとビター感。格付けシャトーばりのクオリティ、流石。
合う料理 牛フィレや鴨肉のロースト、ジビエ、肉煮込み、スモークサーモンなど。
2022年10月試飲
シャトー グロリア
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート パーカーJr.著より抜粋
グロリアは常に、なぜ1855年のメドックの格付けが時代遅れであるかを示す一例として用いられてきた。当初の格付けに含まれていないグロリアが過去25年間の2000年、1996年、1995年、1994年、1989年、1986年・・(中略)・・のようなヴィンテージに(近隣の格付けシャトーから購入した畑から)つくったワインは、確かに多くの格付けシャトーで産出されたものと同じくらい良好だったのだ。抜け目のない商人や消費者たちはずっと前からその品質を知っていたため、このワインはアメリカや諸外国で幅広く販売されてきた。
グロリアの所有者であった故アンリ・マルタンは、1991年2月に亡くなったが、メドックの伝説的な人物の1人だった。彼のワインが大衆に訴えることを目的につくられていたのは間違いない。まろやかな、気前のよい、非常にブドウの完熟感のあるワインで、すばらしい西洋杉のような、スパイシーな、大げさと言ってもよいほどのブーケがあったのだ。
こうしたワインづくりは、彼の義理の息子であるジャン=ルイ・トリオーの管理下でもいささかも変化しなかったようだ。ここのワインは若いうちでも驚くほど出来がよいが、12~15年は熟成させられる。1960年代から1970年代前半のスタイルは1970年代半ばに変化し、1978~1993年のヴィンテージではまぎれもなく、それ以前に比べて軽く、より明白にフルーティになり、タンニンが少なくなったようだった。ただし、2000年、1996年、1995年のものは明らかにより筋骨たくましい、より豊かなワインとなっているので、1978年以前のスタイルへの回帰を暗示しているのかもしれない。いずれのスタイルにしても、グロリアはすばらしく生き生きとした、おいしいワインで、実際の品質よりはるかに安い価格で販売され続けている。ただし、警戒すること。1990年代後半のいくつかのヴィンテージには、憂慮するほど多くの「コルクのせいで変質している」ボトルがあった。
一般的な評価
グロリアのワインは、果実味が主導権を握っており、しなやかで、常に健全につくられており、いつも信頼がおける。格付けシャトーではないため価格は依然としてリーズナブルだが(設立は1940年代で、1855年と1932年の格付けの後だったのだ)、ヴィンテージによっては四級や五級に匹敵する品質のものとなる。ほとんどのサン=ジュリアンよりもはるかに安いため、メドック全体とは言えなくても、このアペラシオンにおいては最良のお買い得品の1つとなっている。