エスプリ・ド・パランシェール 2010
良年しか造らない特別キュヴェ。
樹齢:平均50年
熟成:オーク樽熟成14ヶ月間(新樽比率90%、225L)
【テイスティング・コメント】
深いガーネット。粘性は高め。香りにはトーストやココア、チョコ、バニラなどの芳しい樽香が支配的。続いてブラックベリーやチェリーなどの凝縮した果実香、クローブやナツメグなどのスパイス、燻したハーブ、黒オリーブ、杉、茸、タバコなどの香りが現れる。奥行のある複雑なブーケ、土や温かな大地のニュアンスとともに沸き立つようなミネラルが感じられる。アタックはソフトでなめらか。果実味は凝縮度が高く濃厚ながら過熟することなくドライ、集約した旨みが核となりカベルネ主体らしいしっかりとした骨格を持つ。タンニンは豊富で、継ぎ目が無くシルキー、層状の舌触りとまろやかなコクを与える。飲み応えはもちろんあるが、キメ細かさやフィネスを兼ね備えておりスムーズな口当たりと長く続く余韻をもつ。まさにワンランク上の味わい。合わせるお料理は赤身肉のロースト、牛肉の赤ワイン煮込み、焼き肉、コクのあるチーズなどがおすすめ。
※2016年7月試飲
■シャトー・ド・パランシェール
オーナーのガザニオル家はモロッコの出身でした。モロッコでワイン造りを行っていたラファエル・ガザニオル氏が1958年にパランシェールを購入、ワイン造りの地をボルドーへ移しました。その後、ラファエルの息子であるジャン・ガザニオル氏が、1977年にシャトーを引き継ぎました。現在は共同オーナーにペル・ランディン氏を迎えて、品質向上に努めています。
ガザニオル家がオーナーとなったのは1958年ですが、シャトーの歴史は1570年まで遡ります。LOT ET GARONNEとDORDOGNEの境目に位置しているため、両方の文化の影響を受けています。1731年にシャトーはペリゴール様式で建てられましたが、19世紀の初めにボルドー様式に建て変えられました。今でも、一部18世紀のペリゴール様式の部分が残っていて、その昔を忍ばせます。
「ラス・カーズが100ドルもするなら、パランシェールをすすめる」
パランシェールを長年知るボルドーの友人はいつもこう言います。「パランシェールは品質が安定しているから、どのヴィンテージも試飲をせずに買える」近年になって技術も向上し、バッドヴィンテージというのは存在しにくくなってきていますが、80年代、90年代前半はまだまだヴィンテージの差が大きかったです。しかしパランシェールはそんな時代から常に安定した品質を維持し、ロバート・パーカーやデキャンタ誌などからも常に高い評価を得てきました。また、シンガポールのラッフルズホテルを始め、アジア各国の一流ホテルで扱われていることからのその堅実な評価が窺い知れます。かつてパーカーは「ラス・カーズが100ドルもするのなら、私はパランシェールをすすめる。」と言ったことがあります。
古木だからと決めつけず、試飲でレベルをみる
比較的平坦な畑が広がるボルドーにおいて、パランシェールはまさに「丘」にあるシャトー。また、畑の平均樹齢は35年ですが、100年を超えるものや、ラファエル・ガザニエル氏が植えた45年のものもあります。3つのキュヴェを造っていますが、区画は特に分けておらず、一番上のキュヴェ・ラファエルには古木から取れたブドウを多く使用することに決めていますが、結局は出来上がったキュヴェを試飲して決めます。古木であれば必ず良いレベルのキュヴェが出来るわけではないというのが理由です。
畑の環境を守るために
シャトー・ド・パランシェールでは、ワインの品質を維持するため、環境に敬意を払うためにサステーナブル農法を実践しています。彼らのサステーナブル農法では、まず土壌の保全を第一に考えます。土を健康に保つため、あえて畝間に雑草を生やしたままにしたり、伝統的な耕作法を行ったり、また、どうしても必要にならない限り農薬や有機肥料を使わないようにする、など非常に徹底しています。
酸素注入により果実味を閉じ込める
オーナー一族がボルドー出身でないこともあり、ここの熟成方法は変わっています。一度樽に入ったワインは澱引きを行なわず、澱上で熟成させます。その後、ボトリングまで一回も樽から外に出さず、酸素を注入しワインを空気に触れさせます。この過程により、果実味を逃すことなくワインの中に閉じ込めることができます。