シャトー・オー・バージュ・リベラル 2003
樹齢:35年 熟成:オーク樽にて18~24カ月
テイスティング・コメント
オレンジがかったエッジの深いガーネット。粘性は中程度。香りにはブラックチェリーやカシス、リコリス、ペパーミント、ブラックペッパーやタイムなどのスパイスのノート。加えて樽由来のバニラ、焙煎コーヒー、チョコ、トーストなどの芳しい香り、タバコ、レザー、湿った土、粘土、ミネラルのニュアンスが複雑性・奥行きを与える。アタックはソフトでなめらか。キメ細かなタンニンと豊かな酸味が溶け込むしっとりとした舌触り。果実味は豊満なボディを呈し、オークの要素と一体となる。黒果実を基調としたドライフルーツやリコリスを思わせる風味があり辛口、ミネラルの構造が味わいと上品な酸を支えている。熟成により角がとれ旨みがじんわりと広がり、骨格のある力強い酒質にもしなやかさを併せ持つ。コクを備えたフルボディ。アフターの余韻も長め。
2016年4月試飲(2005年ヴィンテージ)
シャトー・オー・バージュ・リベラル
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
ボルドーの主要ワイン街道である県道2号線からは少々引っ込んだところにあるつつましやかな大きさのシャトーで、1970年代半ば以降、一貫して過小評価されてはいるが上質なワインをつくっている。畑は3つの区画からなり、立地はこの上ない。主要区画(50%強)は、ラトゥールのメインの畑に隣接している。ちなみにもう1区画はピション=ラランドの隣、3番目の区画はさらに内陸のグラン=ピュイ=ラコストの近くである。
このシャトーはボルドーの名士クリューズ家が1970年代に全面近代化したのもだが、1983年にはヴィラール家が経営するシンジケートに売却された。ヴィラール家はほかにもムーリのシャス=スプリーンと、マルゴーのラ・ギュルグという、よく知られたシャトーを所有・経営している。畑は1960年代前半に植え替えられ、いまや円熟の時を迎えようとしている。1960年代、1970年代前半のワインが凡庸であったのは間違いなく樹齢が若かったためだが、1975年には優れたワインが生まれ、最近でもいくつかのヴィンテージ、特に1995年、1990年、1986年、1985年に品質の高さをうかがわせる成功作が続いている。
オー=バージュ・リベラルは、強靭で、ブドウの完熟感があり、豊かで、ブラックカラントを強く連想させるワインであるが、これは間違いなくカベルネ・ソーヴィニョンの割合が高いためである。
■一般的な評価
1990年代にはいささか品質のレベルが低下したが、つくりは健全で、その五級の地位にふさわしいのもとなっている。いまだに消費者や業界誌には過小評価されていて、偉大なワインではないが、いつでも関心を持つだけの価値があるワインだ。値付けがリーズナブルな点から見て、特に最良のヴィンテージはそうである。