アンヌ グロ エ ジャン ポール トロ ラ サンコント サンコント 2020
カゼル周辺のIGPコート デュ ブリアンにある合計3haの畑。標高は220mで砂岩、マール、粘土石灰質土壌。アンヌとジャン ポール二人が力を合わせて造ったこと、ワインを飲む際に誰かと共有してほしいという意を込めて50/50とした。終始一貫してクリーンで張りがあり、ピュアな果実味は輝かしいフィニッシュへとつながっていく。どんな料理も引き立たせ自然と杯が進む、真のテーブルワイン。
醸造・熟成 : ステンレスタンクで発酵、14ヶ月熟成
テイスティング コメント
紫がかったルビー/ ガーネット。プラムやカシス、スミレの香りに、ブラックペッパーやシナモンなどのスパイスの香り。そして黒オリーブ、ヨード、土、ミネラルのニュアンスが重なり合う。味わいは非常になめらか。濃縮感のある豊かな果実味でファーストアタックこそ甘さ(熟れた果実の自然な甘さ、親しみやすい)を感じるが、瞬時にスパイスのギアが全開し食欲を掻き立てる。幾分軽やかなタンニン、上品な酸とのバランス。アルコール分が充実しミネラルを伴う立体的構造をもつ。持続性のあるフィニッシュ。合わせるお料理はオードブルからハム、ソーセージ類、肉料理など。
2021年11月試飲
アンヌ グロ エ ジャン ポール トロ
理想の地、カゼル
ラングドック地方の中でもとりわけ認知度の高いAOCミネルヴォワ。このAOCの最北東端にカゼルと呼ばれる集落がある。人口およそ30人、平均年齢が65歳というこの辺鄙な土地に一目ぼれをした一組の夫婦がいる。ヴォーヌ ロマネ屈指の醸造家であるアンヌ グロとショレイ レ ボーヌの名手ドメーヌ トロ ボーのジャン ポール トロである。醸造学校時代に共通の知人を通して研修先のオーストラリアのワイナリー、ローズマウントで出会った二人は、その後ブルゴーニュに戻ってそれぞれの親からドメーヌを引継ぎ、第一線で活躍する中でパートナーとなるが、それでもお互いのワイナリーに関与することは一切なく、それぞれの仕事に没頭する日々が続く。こうした一方で、二人の中にはお互いに培ってきた知識・経験を共有し力を合わせてワインを造りたいという思いが次第に強くなっていった。「40歳という節目を迎え、何か新しい挑戦がしたくなった。ブルゴーニュでのワイン造りは先代から引き継いだものだったので、自分たちでゼロから何か新しいものを生み出したかった。」というアンヌは、当初南フランスを何度も訪れ、理想とする場所はないかくまなく探し回ったが、なかなか見つからずに苦労したという。そして、ようやく決まったのがブルゴーニュから車で5時間、500kmも遠く離れたカゼルだった。
この地を選んだ理由とは?
この地を選んだ理由は、モンターニュ ノワールと呼ばれる山の麓に位置しながらも地中海の風の影響を受けることができ、かつミネルヴォワで最も標高の高いエリアの一つで、ヴォーヌ ロマネ村と等しい標高(220m)を持つという土地の優位性に加え、モザイク状に広がる石灰、粘土、砂岩、マールという土壌の多様性があったこと。さらに、ブルゴーニュにはないサンソー、カリニャン、グルナッシュ、シラーとの出会いもこの地に惹かれた理由の一つである。「これらの品種がどういった個性を発揮するのか最初はわからなかった」というアンヌは、土壌のタイプや区画ごとに分けて醸造するということが主流ではないこの地で、当初から分けて醸造・熟成を行うことでこの土地の個性と品種の特性を深く学んでいった。ワイン造りはブルゴーニュと同じ哲学で行っており、栽培はリュット レゾネ。空気の循環を良くするためキャノピーマネジメントを一段と意識し、ラングドックではあまり一般的でない芽かきも行う。ブドウは全て手で収穫され、100%除梗の後、自然酵母を用いてステンレスタンクで発酵を行う。キュヴェごとにステンレスタンクとフレンチオークバリックを使い分けて熟成。樽はブルゴーニュで使用しているものと同じものを使用しており、区画ごとに醸造したワインをボトリング前にブレンドする。
まるでブルゴーニュを飲んでいるかのよう
ラングドックで造っているにもかかわらず重たさや暑苦しさを全く感じさせない二人のワインは、2008年のファーストヴィンテージからジャンシス ロビンソンに「まるでブルゴーニュを飲んでいるかのよう」と絶賛される。また、WA誌では「南フランスでありながらここまでの果実味と張りが両立するエネルギッシュなワインはめったにない」と太鼓判を押されている。一般的に、この地で造られる高得点のワインは力強さや重さを持つものが多いが、エレガンスや張りといった真逆の要素でここまで高い評価を年々受け続けている生産者は他に例を見ない。ミネルヴォアのカゼルという土地のテロワールを発信し続けてきた彼らであるが、近年この土地に対する理解がより深まったことから、新たな可能性を広げるためにピノノワールやシャルドネをはじめとする新しい品種のリリースを計画している。常に高みを目指しまい進する彼らの今後に、ますます目が離せない。