フリッツ・ハーク ヴァイスブルグンダー Q.b.A. トロッケン 2018
ユッファーとは対岸に位置する斜面の畑で、地層が幾つも重なる土壌です。畑の上部に森があり、水分供給も十分です。オリバーはここに、遊び心からヴァイスブルグンダー(ピノ ブラン)を植えました。特に実が小さくなるクローンを選んで植えています。一部ステンレスタンク、一部フーダー、一部500Lのトノー(フレンチオーク)を使用しています。凝縮感はあるが、力強すぎないモーゼルスタイルのピノ・ブランです。
テイスティング・コメント
グリーンがかった淡いレモンイエロー。アロマは新鮮かつフローラルで、ライチやリンゴ、メロン、洋梨のコンポート、ジャスミン、花の蜜を想わせる。そしてジンジャー、レモングラスなどのスパイシーな香り。僅かにスモーキーで、塩っぽさと鉱物的なミネラルのニュアンスをもつ。アタックは爽やかでジューシー。味わいこそ親しみやすさがあるが、ストイックなまでの真っ直ぐさに芯の強さを感じる。グリップは程よくしっかりとしたストラクチャー。豊富なミネラルを含み、クリアーで生き生きとした酸味が果実味を引きたてる。ボディも程よくフィニッシュのキレが良い。仄かな苦みが味わいに深みを与えている。合わせるお料理は、前菜、和食全般、淡泊な魚介・肉料理、シュークルート、またエスニック料理とも相性がよい。
2019年10月試飲
フリッツ・ハーク
10年後もブラウネベルグを代表する生産者であり続ける、それこそが私たちにとってベストな選択だ
複数の農業からワイン造りだけに専念することを決意し、数十年に渡りワイングートを発展させたヴィルヘルム・ハークに代わり、2005年に彼の次男オリバー・ハークがワイン造りを引き継ぎました。最高評価5房を獲得するだけでも難しいと言われる「ゴーミヨ ドイツワイン ガイド」で、世代を超えて長年に渡り、最高評価を維持し続けてきた数少ない生産者です。
モーゼル中流域の8つの銘醸畑でワイン造りをし、テロワールの違いを表現する実兄トーマス ハーク(シュロス リーザーの当主)とは対照的に、オリバー・ハークは、他の銘醸畑には手を広げず、ブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウーアとブラウネベルガー・ユッファーでさらなる成功を収めることが自分の使命と考えています。ブルゴーニュのように畑の等級が無い代わりに村名(ブラウネベルガー)と単一畑表示の表記(ブラウネベルガー・ユッファー、もしくはブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウーア)を造り、ブルゴーニュでいう、グラン・クリュやプルミエ・クリュのようにランクを分けています。そして、ユッファーやユッファー・ゾンネンウーアのような単一畑表示でリリースするワインは、その畑の中でもベストな区画の葡萄を使い、明確な違いを表しています。
小さな規模でハイクラスなワイン
「年によって自然の作用があり変化はあるが、クリーンなワイン。ヴィンテージが違っても、フリッツ・ハークのワイン、ブラウネベルガーのワインと分るスタイルを目指している」と語る、現当主のオリヴァー氏。小さな規模で、ハイクラスのワインを造っていきたいと考えています。
ワインの種類をシンプルに
オリヴァーは、ラベル表示(ワインの種類)を簡単にしたいと考えています。カビネットやシュペートレーゼなど等級が付いたら甘口、等級が付かずトロッケン表示があれば辛口。これは、シュペートレーゼ、アウスレーゼという文字だけで、甘口と思われてしまうからです。等級表示無しの場合、中身がシュペートレーゼ、アウスレーゼクラスでも、法律上はQ.b.Aとなります。
甘いのに甘くない!?
オリヴァーの造るワインの特徴は、甘く感じないことです。アウスレーゼであっても料理に合わせられるようなイメージで、アウスレーゼ ゴルトカプセルのようにトロリとしたものでも、驚く程さっぱりと飲むことが出来ます。
辛口造りのこだわり
スタンダードクラスは、軽やかなスタイルを目指しているため早めに葡萄を収穫します。上のクラスのものは、なるべく遅く摘み取りながらも、ボトリティスのついた葡萄を使わないようにします。また、父の造りに比べ、辛口は酵母に寝かせる時間が長くなりました。長くシュール・リすることで、酸を1g/l程低く出来、酸があまり主張し過ぎないようになります。
和食と相性抜群
オリヴァーはアジアを訪れ、「気候、料理共にドイツワインに合っている、特に日本食が一番」と感じたそうです。
数々の高評価
「ゴーミヨドイツワインガイド1994」で、『最高の生産者』。「ワイン プラス2017」と「ゴーミヨドイツワインガイド2008」、「ヴァイン グルメ2008」で、「コレクション オブ ザ イヤー」。「アイヒェルマン2018」でベスト エーデル ズース(高貴な甘口) コレクション。「ヴィヌム2019」で4.5星、「ゴーミヨドイツワインガイド2019」で赤4房、「アイヒェルマン2019」で5星。ヒュー ジョンソン「ポケット ワイン ブック2019」にブラウネベルグのトップ生産者として赤★★★★、『ワインは父ヴィルヘルムよりモダンなスタイル』と紹介。ロバート パーカー Jr.「ザ ワールド グレイテスト ワイン エステイト」に掲載。V.D.P.設立メンバー。
「ヴィルヘルムからオリヴァーにバトンタッチしたことで、フリッツ・ハークのワインは、かつてウィーンのクラシック音楽がハイドンとモーツァルトからベートーベンとシューベルトに進化したように変化している。同じ家族のものでありながら、そのワインは現代的になり、より熟した、豊かで肉感的な、丸く、濃く、力強く、複雑なものになった。
「ブラウネベルクで辛口リースリングを造るのは、10年前だったらまず不可能だった」とヴィルヘルムは(やや誇張気味に)言う。それが今日では、このワイナリーで生産されるワインの60%から70%が辛口ワインだ。」シュテファン ラインハルト『FINE WINE ドイツ』より。