シャトー・ブラネール・デュクリュ 2012
テイスティング・コメント
赤み/紫がかった、深いガーネット。香りはクランベリーやラズベリー、ブルーベリーなどベリーフルーツの香りが豊かで、それでいてなんとも慎ましく品の良さが漂う。そしてフローラルな花の香りに、クローブやブラックペッパー、タバコ、チョコ、鉛筆、カカオのヒント。口に含むとスムーズでなめらか。しなやかなタンニンと調和のとれた穏やかな酸味、純度が高く味わいは凝縮感がある。カベルネ主体らしい骨格はもちろんパワフルでリッチ、そこにエレガントさが加わり全体的な均衡が保たれている。後半にかけてドライ感、素晴らしい質感と突出した長く続く余韻を持つ。合わせるお料理は、牛フィレや鴨肉のロースト、ラム肉の香草焼き、ジビエ、茸炒め、焼き野菜、スモークサーモンなど。
2019年12月試飲
シャトー・ブラネール・デュクリュ
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
私が見る限りいつでもそうなのだが、ブラネール・デュクリュはなぜか過小評価され、価値を低く見られてきた。ボルドーの熱狂的な支持者たちが自分のお気に入りのワインを論議する際にも、忘れられがちだったのである。サン=ジュリアンを旅行で通過した人なら間違いなくメドックのワイン街道沿い、ベイシュヴェルの真正面にある、平凡なベージュ色の建物には気づいただろう。最上のヴィンテージには、サン=ジュリアンの最高のワインと同じくらい良好な、とてつもなく香りの高い、深みとコクのあるワインとなるのだが、1990年代の半ばから後半までブラネール・デュクリュはとうてい一貫性のあるワインとは言えなかったし、1980年代には、得体の知れない平凡なつくりのワインが続いた。これは多すぎる収穫量と、厳しさを欠く選別の結果を反映したものだったのかもしれない。新しいセラーの建設と、新しい醸造チームやセカンド・ラベルの導入が、ブラネール・デュクリュをふたたび正しい路線に戻すのに必要な措置であったようだ。1990年代半ば以降の目覚しい成果がその証拠である。エネルギッシュな管理人でもあるパトリック・マロトーを過小評価することはできない。彼はまたボルドーのユニオン・デ・グラン・クリュの会長でもある。
ブラネール・デュクリュの畑は、多くのボルドーのシャトー同様、サン・ジュリアンの村全体に散在している。
ブラネール・デュクリュのワインには独特な個性がある。サン・ジュリアンにしてはとりわけスパイシーであり、ほとんどエキゾチックと言えるアロマはスパイス、オーク、ヴァニリンを思わせるし、味わってみると、しばしば突出した、独特のチョコレートのような成分が感じられるため、ブラインド・テイスティングでも比較的簡単に識別できる。この独自の特色はことに2000年、1996年、1995年、1989年、1982年、1976年、1975年のような偉大なヴィンテージで顕著である。
一般的な評価
近年は控えめではあるが確かに良くなっている。1991年以降のヴィンテージは極めて品質に一貫性が出て、深みと凝縮感と充実感を見せながらも、特徴的なエレガンスさとブラネール特有のチョコレート風味のスパイシーさを保っている。投機家からは概ね無視されているが、愛飲家には好まれているというのが、オークションではめったに見かけない理由である。そのため、価格はリーズナブルなままである。最良のヴィンテージのブラネール・デュクリュは、三級に匹敵する。
注記:1991年以降は万事を重力まかせにした最先端のセラーの恩恵を受けている。ここはボルドーでこうした仕組みを採用した最初のセラーである。