シャトー・バタイエ 2006
テイスティング・コメント
深みのある濃いガーネット。粘性は中程度より高め。香りにはカシスやプラム、ブラックチェリー、ミントハーブ、ブラックペッパー、そして樽由来のバニラやトースト、杉、ビターチョコ。他に茸、イチジク、レザー、湿った土のニュアンスがあり複雑、凝縮した果実香に豊かなブーケが広がる。アタックはソフトでなめらか。丸みを帯びたふくよかなボディ感、熟成により全体に柔らかくも、そこにはしっかりとしたカベルネ主体らしい骨格が感じられる。リッチな果実味と穏やかな酸とのバランスがよい。こなれたタンニンは層状でボディに深みと質感を与える。男性的でクラシカルなポイヤック、加えてしなやかさを併せ持ち合わせている。合わせるお料理は、赤身肉のロースト、ビーフシチュー、仔羊の赤ワイン煮、ジビエ、モツ料理、フォワグラなど。
2017年4月試飲
シャトー・バタイエ
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
バタイエは魅力的なシャトーだ。ジロンド河からはかなり内陸に入った、巨木に囲まれた小さな開墾地にあり、南のオー・=バタイエと北のグラン=ピュイ=ラコストにはさまれた畑は全て1855年の格付け当時からのものなのである。だが、英国人のデイヴィッド・ペパーコーンがしばしば指摘してきたように(ちなみに私もまったく同感である)、ネゴシアンであるボリー=マヌー社が流通を管理してしまっているせいで、ボルドーの一般市場では自由に買ったり試飲したりすることができずに、無視されてしまうという傾向にある。そのため、ここのワインはいくつかのヴィンテージで過小評価されてきた。
シャトーの経営は昔からカステジャ家が行っているが、相変わらず比較的古いスタイルの、がっしりとした、色合いのよい、若いうちは判定しづらいワインになることもある、どことなく荒削りのポイヤックをつくり続けている。また、しばしばコメントに書いてきた通り、かなりの貯蔵に耐え得るし、興奮や霊感を感じさせることはめったにないが、本質的には信頼できる適正価格のワインでもある。もっとも、そのコメントを引っ込めるつもりはないが、いくつかのヴィンテージに関しては過小評価していたと思うようになった。忍耐強い愛好家なら間違いなくバタイエの長寿の評判やリーズナブルな価格を称賛するはずだ。しかし、1980年代後半からの品質の向上に力を注いだ結果、バタイエはもはやポイヤックの格付け銘柄で最も安価なものであるとは言いがたくなっている。
一般的な評価
伝統的なつくりのポイヤックであるバタイエは一般に生硬で、タニックで、若い頃よりも10年熟成させたもののほうが近づきやすい。最近のヴィンテージはかなりの改善が見られるようになっている。健全な、五級の格付けにふさわしいワインになっているが、本当の意味で興奮させられるようなワインではなく、仲間のワイン(グラン=ピュイ=ラコストやランシュ=バージュなど)が持つ豪勢さや気前のよさに欠けている。