シェーファー TD-9 ナパ・ヴァレー 2016
醸造:自社畑 発酵: ステンレスタンク
熟成:フレンチオーク (100% 新樽) にて20ヶ月
1973年ジョン・シェーファーはシカゴでのビジネスマンとしての人生を変えるべく、家族を連れナパ・ヴァレーにやって来ました。毎日の乗り物は通勤電車からトラクター"TD-9"に変わり、栽培や醸造の経験など全くありませんでしたが、彼はリスクを恐れずまさにゼロからの出発でワイン造りにその人生を捧げました。息子のダグ・シェーファーも開拓者の精神を常に忘れず、2人の強い心と行動力によって今日の成功を築き上げました。ダグは父の苦難の半生を振り返り、その原点となったTD-9の名を新しく生まれたキュヴェに捧げました。
テイスティング・コメント
紫がかった深いルビー、黒みが強い色調。粘性は高め。香りは野性味あふれる様々なベリーフルーツやプラム、カシスのコンポート、ラベンダー、バラの花びらを思わせ、ドライハーブ、スパイシーなオークのノートがアクセント。エネルギッシュかつフローラルで濃縮感がただよう。バニラやココア、ダークチョコ・・・、シロップ漬けのオレンジピールをダークチョコでコーティングしたかのような、魅力的なブーケが解き放たれる。他にベリーフルーツのケーキ類、リコリス、皮革、ミネラルのヒント。口に含むとなめらかで膨らみのあるテクスチャー。果実味は濃厚ながらも親しみやすく、香り同様のフルーツの風味で満たされる。しっとりとしていて若いながらもタンニンは熟し、舌触りはシルキー、真っすぐな個性が光る。味わいは層状で、やわらかさとストラクチャーを合わせもち、アルコール感もさることながら余韻の長さも突出している。
2018年12月試飲
シェーファー・ヴィンヤーズ
出版業界での華やかなキャリアを捨て、ジョン・シェーファーがナパ・ヴァレーのスタッグス・リープ・ディストリクトのヒルサイドにワイナリーを創立したのが1972年。ワイン造りなどまったく知らなかったジョンはワインメイキングの本を片っ端から読む事から始め、理想のワインを目指しました。その後、醸造学を学んだ長男のダグ・シェーファー、現在敏腕ワインメーカーとして腕を振るうイライアス・フェルナンデスが加わり、その品質は揺るぎないものとなっています。
遡ること1978年、彼らは先ずカベルネ・ソーヴィニヨンを破砕し、1年後にワイナリーで醸造を始めました。これが最初のワインでシェーファー カベルネ・ソーヴィニヨンはベンチマークとなりました。そしてこの1978年産のカベルネが10年後の1988年にドイツで開催された国際的なブラインド・テイスティングで、なんとボルドーの銘醸「シャトー・マルゴー」や「シャトー・ラトゥール」、「シャトー・パルメ」等を押さえ、堂々1位を獲得。カベルネ・ソーヴィニヨン以外でもメルロ、シラー、シャルドネ等にも情熱を注ぎ、シラーが主体の“リレントレス”がワインスペクテーター誌の『世界のベスト100ワイン』において堂々の一位となるなど、近年ますますその品質に磨きがかかっています。疑いなくナパで最も成功しているワイナリーのひとつでしょう。
シェーファーはまた、100%ソーラー発電によってワイナリーの消費電力をまかなうナパ・ヴァレーで初めてのワイナリーとしても知られており、栽培や醸造においても環境保全型のワイン造りを早くから実践しています。その味わいはいわゆるモダンなスタイルです。複雑で重厚感のあるその風味を霧と冷たい海風がもたらすスタッグス・リープ・ディストリクトの冷涼な気候が骨格となって支えています。
『世界の極上ワイン』ロバート・パーカーJr.著より抜粋
カベルネ・ソーヴィニヨン・ヒルサイド・セレクトは、世界で最もけた外れのカベルネ・ソーヴィニヨンのひとつで、確かにその原産地を表現している。ナパが偉大だった年には、これは群を抜いてつくるのが簡単なワインだとシェーファー父子は言う。だが、干ばつに襲われた年には、保水力のないやせたここの土壌は、事実上畑を枯らしてしまうこともあり得る。カベルネ・ソーヴィニヨン・ヒルサイド・セレクトの果実は非常に小さく、通常はブルーベリーほどの大きさしかないが、異なるクローンも植えられている。現在、カベルネ・ソーヴィニヨン・ヒルサイド・セレクトの生産量はわずか2,400ケースしかなく、そのすべてがシェーファーの極めて熱心な愛好家の一群によって、飲みつくされてしまっている。