エミリアーナ ヴィンヤーズ コヤム ヴァレ デ コルチャグア 2020
ホセ ギリサスティが畑仕事をした日の夜、目が赤くなり、肌が痒くなり、頭痛がしたり。毎日働いている労働者の健康はどうなっているのだろうか、そもそもブドウの樹に悪い影響はないのだろうか、そのブドウから造るワインは大丈夫なのだろうか。
そんな疑問から始まったエミリアーナの有機栽培の出発点がコルチャグアのロス ロブレスの自社畑です。そこで試験的に栽培した数種の品種が全てうまく成長し、そのブドウを全てブレンドして造ったワインがこのコヤム2001年ヴィンテージでした。2年後、チリ ワイン アワードに出品されたコヤムがその品評会の最高峰「ベスト イン ショー」に選ばれ、エミリアーナは全ての畑の有機栽培・バイオダイナミック農法への転換を決意しました。
チリ初のオーガニックワインであるコヤムが「ベスト イン ショー」を獲得した事はチリのワイン業界でも衝撃の事実となり、それ以降、エミリアーナのフラッグシップワインになりました。
熟成: フレンチオーク樽75%(新樽、1 年使用済み、2 年使用済み樽の組み合わせ)、2,000L と5,000Lのフードル樽15%、卵型コンクリートタンク10%で18ヶ月。
テイスティング コメント
紫を帯びた濃いルビー / ガーネットの色調。香りはブラックベリーやラズベリー、カシスのアロマとスミレ、ハーブ、スパイスのノート。加えてバニラ、チョコレート。複雑で湿った土のニュアンスも感じる。味わいは丸くふくよか。程よいボリュームを備えたバランスのよい仕上がり。キメ細かなタンニンと、フレッシュで繊細な酸味がきれいに溶け合っており上質でベルベットのような質感をもつ。しっかりとした構造、凝縮感がありながらも繊細で奥行のある余韻が印象的。果実とスパイシーさが絶妙。
合う料理 赤身肉のグリル・煮込み、スパイシーな肉料理、肉詰めピーマン、肉野菜炒め、ピッツァなど。
2024年2月試飲
エミリアーナ ヴィンヤーズ
エミリアーナ ヴィンヤーズはギリサスティ ファミリーにより1986年に設立されました。チリ初のバラエタル ワインをリリースする等、設立当初からチリのワイン業界に剌激を与える革新的なワイナリーでした。
1990年代後半、栽培を担当していたホセ ギリサスティは、畑仕事をした日、家に帰ると目が赤くなり目眩がしたり、肌が痒くなり、時には頭痛がするなど体の変調に気付くようになりました。「毎日畑で働いているスタッフはどんな健康状態なのだろうか。そもそも、その中で栽培されているプドウの樹は健全なのだろうか。そのブドウから造るワインは安全なのだろうか。」そんな疑問を持った彼は、家族に有機栽培の製業を提案します。まだ、チリで有機栽培を語る人もいない時代でしたが、家族は自社畑の一番良い区画を試験的に有機栽培を実践する場として提供しました。
そこから3年経った2001年、その有機栽培のプドウからチリ初のオーガニック認証ワイン「Coyam (コヤム)」が誕生しました。そして2年後の2003年、チリ ワイン アワードに出品されたコヤム2001年ヴィンテージは、「ベスト レッド ブレンド」、そしてその品評会の最高峰である「ベスト イン ショー」に選ばれました。この受賞がエミリアーナのやってきた有機栽培が間違っていなかった事を証明し、エミリアーナは全ての畑の有機栽培・バイオダイナミック農法への転換を決意したのです。ホセは、南米バイオダイナミック農法の第一人者であるアルバロ エスビノーサと共にエミリアーナを世界一大規模な有機栽培&バイオダイナミック農法のワイナリーヘと導いていくことになります。
エミリアーナの畑は全て有機栽培&バイオダイナミック農法で行われています。有機栽培は殺虫剤・除草剤・化学肥料等の農薬を使用せず、動植物の生態系循環を改善しながら行う農業です。例えば、化学肥料の代わりにブドウの葉・枝・ワイン醸造の後に残ったブドウの皮や梗・動物の排泄物で作った堆肥を使用します。雑草はアルパカ、ガチョウ、馬等の動物が食べ、畑に下草や野菜を植える事で土壌に窒素を与えます。また生態系循環の改善とは、例えば、ブドウに害を与える害虫の生息地になる「動植物の廊下」 をブドウ畑の中に作り、害虫をブドウの木に寄り付かないようにしたり、その害虫を食べる雌鵡やガチョウを畑に放したりする事で、自然の生態系の循環を作り自然の力で安全な農業を行う事です。
エミリアーナの有機栽培は ECOCERT(エコサート)より認証を受けています。
また、バイオダイナミック農法とは、オーストリー・ハンガリー帝国出身の哲学者ルドルフシュタイナーが提唱した自然環境と同調した農業の形です。太陽や月の天体の動きを基に した農業暦に基づき、動物・植物・鉱物の相互作用から作られる調剤を使用して土壌にエネルギーを与え活性化させ、自然のリズムやエネルギーに同調しながら行う農業です。エミリアーナでは同じ敷地内で栽培したカモミールの花・オークの木の樹皮・タンポポや、水晶等 9種類の植物・鉱物等を調合した調剤を使用しています。
エミリアーナ ヴィンヤーズはチリのワイナリーで初めて、Demeterから認証を受けたワイナリーです 。
2018年、エミリアーナは有機栽培を始めて、20周年を迎えました。労働者の健康に疑問を持ったことから始まった有機栽培は、環境、その地域に住む人々を取り巻く総合的なサステナビリティのプログラムに進化しています。ただ、そのゴールにあるのは心の底から美味しいと言えるワインを造る事。その目的が揺らぐ事は決してありません。環境と人々のハーモニーが美しいワインを造り上げるのです。