ル パンやピュイグローを手がけるティエンポン家が造るボルドー ロゼ。赤ワイン用のブドウよりも収穫を早くすることでフレッシュさを表現。爽やかでフルーティーな味わいは暑い季節におすすめです。
パン デ デューン ロゼ 2019
醗酵: ステンレスタンク(摂氏18度)
熟成: ステンレスタンクにて3カ月間
テイスティング コメント
パールがかった淡いサーモンピンク。香りは赤い花弁、ピンクグレープフルーツ、桃、甘酸っぱいチェリーが広がる、華やかかつフレッシュなアロマ。味わいは生き生きとしておりなめらかで、柑橘類のニュアンスや摘みたてのチェリーを想わせます。しっかりとした酸味とミネラル感が輪郭を形成し、香りと同じく心地よい酸が印象的。アフターに黒ブドウ由来のタンニンを僅かに感じ、シャープでエレガントな余韻へと誘ってくれます。合わせるお料理は、生ハム、サンドウィッチ、生春巻き、白身魚のカルパッチョなど。
2020年6月試飲
フランソワ ティエンポン氏が語るロゼ ワイン造り
ボルドーのセニエ(※1)したものとは違うロゼが造りたかった。フレッシュなワインにするため、ブドウは収穫直後に破砕、圧搾(※2)を行う。メルロ、カベルネ フラン、カベルネ ソーヴィニヨンをブレンドし、とてもバランスの良いワインとなっている(ヴィンテージによってセパージュが変わる)。「ロゼはスルスルと楽しく飲めるべきもの」と考えており、重いロゼは造りたくない。そのため、畑では摘葉やグリーン ハーヴェストは行わず、完熟する3~4日前に収穫を行っている。その結果、酸味もしっかりあり、アルコール度数の高くないロゼに仕上げている。醸造は「シャトー ピュイグロー」とアントル ドゥ メール東部にある協同組合のセラーで行っている。
※1 セニエ法
オーソドックスなロゼ ワインの製法で、この製法で生み出されるロゼは、赤ワインの“副産物”的なイメージもあります。黒ブドウの皮を発酵タンクの中で一緒に漬け込み、発酵させ、ブドウの皮から色素が抽出されて果汁がピンクに色づいたところで、いったん圧搾。さらに引き続き、このピンクの果汁だけを発酵させる製法です。
※2 直接圧搾法
(発酵前の)黒ブドウを破砕、圧搾すると果汁に皮から色素が染み出し、やや淡いピンクに色づきます。この果汁を発酵させてロゼ ワインを造る製法です。
ティエンポン家
「ル パン」を手掛ける「ティエンポン」家
フランソワ ティエンポン氏
ポムロールの銘醸「ル パン」やサン テミリオンの銘醸「パヴィ マカン」など、右岸のトップ シャトーを手掛けるティエンポン家。ポムロールやサン テミリオンに限らず、リーズナブルなワインも手掛けており、コート ド フランの地で生み出した「ピュイグロー」はあまりにも有名な代表作です。一族の中でも、「ヴュー シャトー セルタン」のオーナーでもあるフランソワ氏は、醸造学校を卒業後、海外を渡り歩き学んだワイン造りの経験を活かし、高級ワインのノウハウをお手頃な価格のワインに活かしています。
ティエンポン家の歴史
ティエンポン家はベルギー出身の家系で、1847年からワイン商としてワインの販売に携わっていました。1924年、ジョルジュ ティエンポン氏(初代。Georges Thienpont 氏(1881-1960))がヴュー シャトー セルタンを購入し、ボルドーでワイン造りを始めました。その後、同じく所有していたシャトー トロロン モンドを1930年に売却。これは、世界恐慌の煽りで経済的に苦しく、当時はヴュー シャトー セルタンより名前が知られており価格の高かったことからトロロン モンドの方を売却するにいたったということのようです。
現在では右岸を中心に(コート ド フラン、カスティヨン、サン テミリオン、ポムロール、アントル ドゥ メール)多くのワインを手掛けるようになっています。ジョルジュ ティエンポン氏には13人もの子供がいらっしゃり、そのうちの何人かがワイン造りに関わっています。更にその次の世代がジャック ティエンポン氏やフランソワ ティエンポン氏などの“現役世代”となります。
ティエンポン家が所有(または経営)する主なシャトーの分布
ティエンポン家のワインの特徴
端的に言うと「右岸で」「家族経営品質で」「小規模生産」というのが特徴のティエンポン家。彼らが造るワインには、以下のような特徴が共通して感じられます。
・完熟した果実味(青みを全く感じないが、決して過熟ではない)
・メルロの肉厚で柔らかい果実味+カベルネ フランの華やかさと骨格
(ティエンポン家はカベルネ・フランを大切にしています)
・しっかり感じる美しい酸味
・熟れて質の高いタンニンが緻密に詰まっている
・良い樽感があるものの強すぎず、果実味を大事にしている
・アフターに口がスーッとするフレッシュ感とミネラル感
こういった特徴が相まって、綺麗にバランスが取れ、まとまりがある味わいのティエンポン家のワインは、単体で飲んでももちろん美味しいですが、お料理ともよく合います。