リュシアン ミュザール エ フィス サントネ プルミエ クリュ クロ フォバール 2021
サントネの中でも、深みと複雑味を備えたワインを生むといわれるシャサーニュ側のエリアに位置するプルミエ クリュ。斜面上部にあり海抜は300mと高いが、その名の通り石の塀に囲まれているため、ミクロクリマは暖かい。土壌はやせており石灰岩を多く含む。ドメーヌでは1万本/haという密植でブドウを植えている。赤系ベリーのトーンの高いアロマ。リッチで丸みのある果実と、鋭角的なミネラル。ディティールに富むピュアでエレガントな味わい。
熟成: コンクリートタンクで発酵、バリック(新樽10%)で12ヶ月熟成
テイスティング コメント
艶やかなルビーレッド。香りは小さな赤い果実、スミレ、バラの花弁を思わせるフローラルなアロマとポプリ、スパイシーなハーブ、下草、甘草、なめし革の香りなど。野性味があり、同時に洗練された奥行を感じる。味わいはしなやかでピュア。ミネラルを伴うしっかりとした骨格ながら品が良く、繊細さ、ビロードのようななめらかさ、味わい深さなどディテールまで完璧に表現。サントネのワインはよく力強いと形容されるが、彼らのクロ フォバールは単調に言いきれない。フィネスを纏い素晴らしくバランスがとれておりアフターの余韻も長い。
合う料理 牛肉の煮込み、牛肉・赤身マグロのカルパッチョ、北京ダック、ポトフなど。
2023年7月試飲
リュシアン ミュザール エ フィス
スター生産者の地位を確立するミュザール兄弟
ブルゴーニュが誇るピノ ノワールの銘醸地として目を向けるべきこのサントネで、クライヴ コーツがスターの一人と認める造り手がリュシアン ミュザールです。1645年の創業以来、この地でワインを造り続けてきた老舗であり、現在、9代目となるクロードとエルヴェのミュザール兄弟がワインを手掛けています。父親のリュシアンの時代には、この村の他の生産者と同じようにワインをネゴシアンに売っていましたが、1992年にワイン造りを引き継いだミュザール兄弟は、ドメーヌとして元詰めする道を選びました。彼らが頭角を現すきっかけとなったのは、1997年。この年、ミュザール兄弟はコート ド ボーヌのジューヌ タロン(ブルゴーニュの各地区でそれぞれ最高の若手ヴィニュロンに贈られる賞)を獲得し、彼らのブルゴーニュ、サントネ ヴィエイユ ヴィーニュ、サントネ プルミエクリュは審査員の最高評価を得ました。
以降、ミュザール兄弟は理想のワインを求め、二人三脚で栽培・醸造の両面で試行錯誤を繰り返してきました。彼らにとっての良いワインとは、「熟成のどの段階にあっても、常に楽しませてくれるワイン」。高い熟度と強い抽出がもたらす濃厚さよりも、早くからおいしく飲めるバランスの良さを追及しています。栽培はリュット レゾネといいますが、実際はほぼビオロジックです。ビオディナミの手法も取り入れており、ブドウの自己免疫力を上げるために植物から作った調剤も用いています。除草剤は使わず、定期的に土を掘り起こすなど、土の状態と周囲の環境に配慮し、また健全なブドウを得るために、区画ごとにどのような処置が必要かを常に計算して畑仕事に取り組んでいます。
最もお買い得な生産者の一人
醸造面でも細やかな配慮が随所にみられます。選果は畑とセラーで合計2回行っており、特にセラーでは選果台を用いて6人のスタッフが専任でブドウの状態をチェックします。ピノ ノワールは破砕せず、6割のみを除硬し、残りの4割は房ごと用います。数日間低温浸漬したのち、自然酵母で発酵。醸造過程では人の手の介入を最小限に止めており、ピジャージュもあくまで軽く行い、各畑に適切な抽出を見極めています。
16haの所有畑の内、10haをプルミエ クリュが、5haをヴィラージュが占めます。その大半はサントネにあり、この村のクリマの充実度、各畑の個性の明確な表現、安定感ある優れたクオリティが専門各誌から高い評価を得ています。サントネという土地柄、価格が手頃というのも魅力のひとつで、『ワイン レポート2009』では、最もお買い得な生産者の一人に選ばれています。畑とブドウの良さを自然な抽出で引き出したワインは、彼らが目指す通り、若い段階から調和的でおいしく楽しめます。今、ガストロノミーで求められているワインそのものです。事実、彼らのワインはラムロワーズやロワゾーなど地元ブルゴーニュの名店をはじめ、ギ サヴォワやアラン デュカスなど、多くのミシュラン星付きレストランでオンリストされています。