シモン ビーズ エ フィス サヴィニー レ ボーヌ オー グラン リアール 2019
1級畑のゲットやヴェルジュレスのある丘のすそ野に位置。南向きの好条件。ビーズ家3代でそれぞれ植えた樹が育ち、魂が宿る。熟したラズベリーと赤スグリの香り、しなやかな果実味を感じさせるフルボディ。ワンランク上の村名サヴィニー レ ボーヌ。
テイスティング コメント
濃いルビーレッド / ガーネット。ワイルドストロベリーやラズベリー、ブラックチェリー、バラの花弁を思わせるフローラル フルーティーなアロマ。そして甘草、コリアンダー、レモンティー、スパイスのニュアンスがアクセント。口に含むとしなやか。キメ細かなタンニンと調和のとれた酸がしっかりとした骨格を形成し純粋で、深みのある果実味を品よくまとめ上げる。力強くもスムースでフェミニンな印象。包み込むような優しさと伸びやかに広がる余韻をもつ。
合う料理 牛肉のたたき、牛・鴨肉のロースト、ジビエ、鶏肉のワイン煮込み、串揚げ料理など。
2022年8月試飲
シモン ビーズ エ フィス
ドメーヌの創設は1880年。初代シモン ビーズがわずかばかりのブドウ畑を耕作してスタート。1950年に孫の3代目シモンがドメーヌを継承すると、ブドウ栽培のみならず、醸造家としての才能にも恵まれた彼は、戦後の経済復興もままならぬ中でドメーヌ元詰めを決意しました。すぐさま彼のワインは高く評価され、レストランのシェフやソムリエ、さらにワイン愛好家の間で広まっていったといいます。
そして1972年にドメーヌを引き継いだのが、3代目シモンの息子、パトリックです。彼はドメーヌの名声をさらに高めると同時に、ブドウ畑を大きく拡張しました。1995年にラトリシエール シャンベルタン、1997年にコルトン シャルルマーニュと、赤白ふたつのグラン クリュを手に入れることに成功し、ドメーヌの総面積は22ヘクタールに達しました。
そして1998年、パトリックは日本人女性の千砂さんと結婚。長男ユーゴ、長女ナスカというふたりの子どもにも恵まれたものの、2013年10月、61歳の若さでこの世を去りました。以後、ドメーヌの舵取りは千砂さんと、パトリックの妹で、ヴォーヌ ロマネのドメーヌ ジャン グリヴォに嫁いだマリエルに委ねられています。
ドメーヌでは2008年から、千砂さんの進言によりビオディナミ農法を採用。子育ての過程でシュタイナー教育に興味をもった千砂さんが、シュタイナーの理論が農業とも結びついていることを知り、アンヌ クロード ルフレーヴによるビオディナミの勉強会に出席したのがきっかけでした。パトリックに相談すると、「セルパンティエールなら試してもいい」と言われたそうです。当時、セルパンティエールの畑はウィルスに冒されており、引き抜くしかなかったのですが、ビオディナミを実践すると畑の様子が徐々に変わっていきました。ワインの質は始めてすぐに変わったそうです。
「2008年からワインにヴァーティカルなラインが出て、緊張感のあるワインになった」と千砂さん。
ワイン造りは今も昔も変わりません。白ワインは収穫後、ブドウをただちに圧搾し、12時間のデブルバージュ。小樽に移して発酵。クリマに応じて6~12ヶ月の樽熟成を行います。新樽率は15~30%と比較的少なめで、古い樽は5年ものまで使用します。バトナージュは機械的には行わず、各樽の状態を見て判断します。赤ワインの醸造も古典的です。基本は100%全房。近年の例外は成熟の難しい区画のブドウを除梗した2007年と、大雨や雹に祟られ完全除梗を決断した2013年。
発酵には木桶を使い、柔らかな抽出のためピジャージュは足。その後、樽に移すが新樽率はきわめて低く、まったく新樽を使わないキュヴェもあります。収穫翌年の1月から3月にかけてすべてのワインを瓶詰めします。
シモン ビーズのワインの特徴は”端正”のひと言。
白はきれいな酸味が基調でミネラルに富み、赤はしなやかながらストラクチャーはしっかりしています。いわゆる過剰なところがないのがこのドメーヌの特徴であり、料理と合わせるとじつにおいしく、その値ごろ感からもレストラン向けのワインといえます。