シャトー ラロゼ 1997
ラロゼは100年以上の長い歴史を誇り、ボルドーの右岸、サン テミリオンにあるグラン クリュ クラッセのひとつとして愛好家に親しまれてきました。長い歴史の中で何度かオーナーが変わり、2013年に大きな転機を迎えることになります。当時、低迷していたシャトー テルトル ドゲをシャトー オー ブリオンを擁するドメーヌ クラレンス ディロンが買収し(2011年)、その後、シャトー名をクインタスに改名(2012年)。そして翌年の2013年にラロゼはクインタスに買収され畑はクインタスに結合されました。
ラロゼは、1980年代以降は安定した品質で、突出して良いヴィンテージには、パーカー氏に『最上の時のラロゼは、隠そうとしても隠しきれない絹のようなきめをもつ非常にブルゴーニュ的なワインであり、広がりのあるブラックチェリーとラズベリーの芳香と、品質の高い、スモーキーな新樽のふんだんな香りが絡み合っている。いつも感じることであるが、ブルゴーニュの偉大な天才であるアンリ・ジャイエが造ったワインと言っても簡単に通ってしまうに違いない。』と言わしめた、今や幻となったサン テミリオンです。
テイスティング コメント
エッジが褐色がかったガーネット。ブラックチェリー、プラム、キルシュの香りと特徴的ともいえるスモーク、ロースト香。クローブやタールなどのスパイス、茸の香り。ほのかにハーブ、森の下草の香りも感じる。口に含むと、しっとりとしたビロードのような舌触りで幾分軽やかなボディ感。風味には熟したチェリーにラズベリー、芳ばしいオークの要素が混ざり合う。繊細なタッチをもつエレガントなサン テミリオン。しっかりとした酸が味わいを支え伸びやかに広がっていく。今も鮮度が保たれている。
合う料理 仔羊・鴨肉のロースト、ハンバーグ、ミートソース料理、茸料理、スモークサーモンなど。
2023年1月試飲
シャトー ラロゼ
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
コート(サン=テミリオンの丘)と呼ばれる斜面に位置するラロゼは、サン=テミリオンでは最も知名度が低く、宣伝されたこともないワインの1つである。しかしながら、そのワインの質の高さが知られるようになるにつれ、必然的により有名になってきた。
ロダン一族がこのシャトーを買収したのは1911年で、1956年以後、2002年に売却されるまでフロンソワ・ロダンが管理してきた。1960年代半ばまでは、ここで生産されたものは、残念なことに、サン=テミリオンの地元の共同組合に30年以上にわたって安く大量に卸されてきたが、それは、ワイン醸造設備がなかったためだ。その後、ワイン生産のすべての過程と瓶詰めがここで行われるようになった。
ラロゼのワインのスタイルはユニークである。肉付きがよく、しっかりしていて、力強く、かぐわしく、リッチで充実している。多様な特性を持ち、時として、ラ・ラギューヌといった南部メドックのシャトーを思わせるようなスタイルとなることがある。またある時は-例えば1990年、1989年、1986年、1985年-は、リッチで、元気いっぱいのブルゴーニュ・ワインに似ている。事実、1985年はいつも私にアンリ・ジャイエのリシュブールを思い出させるほどなのだ! ラロゼは名高いオランダ人作家のヒューブレヒト・ダウケルが「このアペラシオンで最高のワイン」と称した、偉大なワインである。
一般的な評価
ラロゼのような伝統的なスタイルはサン=テミリオンではいささか流行遅れなのかもしれない。最上の時のラロゼは、隠そうとしても隠しきれない絹のようなきめをもつ非常にブルゴーニュ的なワインであり、広がりのあるブラックチェリーとラズベリーの芳香と、品質の高い、スモーキーな新樽のふんだんな香りが絡み合っている。いつも感じることであるが、ブルゴーニュの偉大な天才であるアンリ・ジャイエが造ったワインと言っても簡単に通ってしまうに違いない。しかしながら、私が大好きであったこのシャトーは、この10年間、かつては通常レベルであった秀逸さになかなか追いつくことが出来ないでいる。良好ではあるが、ラロゼの最近のヴィンテージは昔ほど将来有望ではない。この評価の失墜は、最新の醸造法を実践している一派から世に出てきた、華々しいサン=テミリオン産ワインのせいではない。2002年のこのシャトーの売却により、待望の変化が出てくるのは間違いないだろう。
