ラ・クロズリー・ド・カマンサック 2006
テイスティング・コメント
エッジがオレンジがかった濃いガーネット。粘性は中程度より高め。香りはドライフルーツ的要素の強いカシスやプラム、リコリス、メントール、ブラックペッパー、木樽由来のビターチョコや杉、スモーク、葉タバコのヒント。熟成香が綺麗にあらわれており腐葉土や栗の渋皮のニュアンスなど、複雑さも感じられる。口に含むとソフトでなめらか。スタイリッシュな印象がありボディは幾分軽いが、それでもこのクラスとしては十分なタンニンと果実味の豊かさから、味わいに深みとコクが感じられる。ファーストに通ずる“しなやかさ”、ミネラルを含むまっすぐな個性が光る。酸味は穏やかでバランスがよく、辛口で、ビターな余韻が心地よい。合わせるお料理は、赤身肉を中心とした料理、仔羊や鴨肉のロースト、ビーフシチュー、すき焼き、ジビエ、牡蠣フライなど。
2019年1月試飲
シャトー・ド・カマンサック
講談社「BORDEAUX ボルドー 第4版」ロバート・パーカーJr.著より抜粋
カマンサックは、1855年の格付けシャトーの中では最も知名度が低いものの1つである。サン=ジュリアンの西にあるサン=ローラン村という、かなり奥まったところに位置していることも理由の1つだろう。さらに言えば、1970年代までずっと変わらず凡庸なワインをつくってきたことが、総じて人々の関心を遠ざけてしまった。しかし、カマンサックの事態はよいほうへ変化してきた。
カマンサックの復興を担ったのはフォルネール兄弟である。彼らは1965年にこのシャトーを買収すると、ブドウ畑の植え替え、シェ(ワイン蔵)と醸造設備の刷新という費用のかかる仕事に取り組んだ。フォルネール兄弟はスペインのリオハ地方にもマルケス・デ・カセレスというワイナリーを所有しており、そこでつくられるモダンなスタイルのワインによってよく知られている。
カマンサックのワインはスタイルが軽くなり、しなやかさと果実味を強調したものになった。カマンサックはより良質のワインをつくるようになったが、五級シャトーを代表するほどのものではない。確かに良質の果実味、ミディアムのボディ、よいヴィンテージなら10年間はセラーで寝かせるに十分なタンニンといった、ある種のサン=ジュリアン的な特徴を持っている。1980年代終わりに私が行ったテイスティングでは、湿った段ボールのようなにおいがするワインが多かったが、この問題は1990年代になって改善された。凝縮感と、率直で四角四面なスタイルを持つワインになっている。