ボデガス モルカ フロール デ モルカ 2022
6つの村に点在する畑のブレンド。他キュヴェと比べるとやや樹齢の若いブドウが主体。ブラックベリー、ブルーベリー、プラムのアロマが層を成し、リッチではじけるような果実味があります。ゴディナが濃縮感と高級感であるのに対し、こちらは華やかさと果実味が前面に出た、ガルナッチャ品種の個性あふれるワインとなっています。
ステンレスタンクで発酵、バリック6ヶ月熟成(新樽10%)
テイスティング コメント
紫がかった濃いルビー / ガーネット。色彩豊かなベリーフルーツ、プラム、スミレの花のアロマに甘草、モカ、ダークチョコレート、ペッパーのノート。味わいは濃厚で、それでいてスムース。非常にキメ細かく熟したタンニンが溶け込んでおり調和のとれた綺麗な酸が輪郭を形成。背景にミネラルを感じ、全体的に丸くしなやかな構造をもつ。力強さと繊細さ、仄かな残糖が心地よく親しみやすさを覚える。
合う料理 牛フィレやラム、鴨肉のロースト、焼き肉、餃子、お好み焼き、豚バラと茸のパスタなど。
2022年8月試飲(2020年ヴィンテージ)
ボデガス モルカ
旧来のフミーリャのイメージ刷新の立役者となった生産者、ボデガス フアン ヒル。ワイン アドヴォケイトで極めて高い評価を受け、世界的な注目をフミーリャに向けさせました。ボデガス モルカはボデガス フアン ヒルをはじめとするヒル ファミリー エステーツのブランドの一つです。
ヒル ファミリーの新たな挑戦
フミーリャを代表するワイナリー、フアン ヒル。当主であるミゲル ヒルはフアン ヒルやエル ニドを通してフミーリャとモナストレルのポテンシャルを世界中に発信してきました。しかし彼の情熱はフミーリャにとどまらず、いかにリーズナブルに、しかもテロワールを生かしたワインをつくれるのかという視点から、スペイン各地に眠るポテンシャルのある土地を探し続けてきました。その結果、リオハ、カスティーリャ イ レオン、リアス バイシャスなど現在率いるワイナリーは多岐に及んでいます。これらのプロジェクトを次々と成功に導いてきたミゲルが次に注目したのがスペイン北部、アラゴン州に位置するD.O.カンポ デ ボルハでした。この地はナバーラ南部の延長線上にあり、サラゴサに向けて流れるエブロ河の南に位置します。西に標高2000mを越えるモンカヨ山がそびえる大陸性気候のこの地は、スペイン国内でもとりわけ暑く乾燥しており、フミーリャ以上に朝晩の寒暖差が激しいところです。こうした過酷な気候のもとで栽培面積の70%近くを占めるのが土着品種のガルナッチャです。この知られざるDOには、実は多くのガルナッチャの古樹が植わっており、高品質なワインを生み出すことから「ガルナッチャの帝国」とも称されています。
最高品質のガルナッチャを生み出すポテンシャル
カンポ デ ボルハのワインを幾つかテイスティングしたミゲルはこの地に最高品質のガルナッチャを生み出すポテンシャルを強く感じ、2011年からワイナリー設立を検討しリサーチを開始。そんな中、ヒル ファミリーにて長年ミゲルと タッグを組んでいたジョルディ フロスが義理の父の畑から自家用ワインを作っていた所にミゲルが立ち寄り、一口飲んだところその味わいに感動。畑・土壌を観察した後に「本気でワイナリーにしないか」とジョルディに持ち掛けたのはガレージに着いて数時間後の事でした。数樽のワインがモルカとしてスペイン国内で初リリースされたのが2014年、スタートから評判は非常に良かったそうです。当初5haだった畑は現在60haまで拡大。標高500~850mに広がる畑には約25の区画が点在し、鉄分を含んだ粘土がメインの土壌。認証は取っていませんが全てオーガニックで栽培し収穫も全て手作業です。高樹齢のブドウが多いため自然と収量が制限され、さらに畑での厳しい選果を経て収量は約10hl/haと恐ろしい程に低くなっています。
モルカの妥協なきこだわり
醸造を担当するフランク ゴンザレスはエル ニドの醸造にも携わった経験があり、その傑出した仕事ぶりから、今では複数のヒル ファミリーのワイナリーでも醸造長を務め、現代スペインワインを牽引している人物です。モルカの醸造では、プレスは9~12時間かけてゆっくり行いますが、発酵は28℃以下で最大7日間とマセラシオンを短めに設定。こうすることで過度な抽出を抑え、シルキーなタンニンが生まれます。熟成樽は複数のメーカーから購入しており、お気に入りはドミニク ローラン社のもの。フランク曰く「オーク材のきめ細やかさが格段に違う。」これが凝縮感がありながらもエレガントなスタイルを実現させるといいます。熟成中は厳正なるバレル セレクションが行われ、「最高のガルナッチャ」を信条とするモルカの妥協なきこだわりが垣間見られます。古樹、低収量のブドウからは、凝縮感のあるフルボディで色調・アロマともにリッチなワインが生まれ、同時にヒル ファミリー特有のモダンで艶のあるスタイルを感じる事が出来ます。ファーストヴィンテージの2014からギア ペニン、Vinousで高評価を獲得しており、畑を拡大したとは言え、それに追いつかない程スペイン国内外からの需要が高まっています。スペイン最高峰のグラン ヴァンの1つとして地位を確立した「エル ニド」同様、今後ますます入手が困難になる事が予想されるワイナリーです。