トイスナー リブキー・シラーズ ヴァロッサ・ヴァレー 2015
フレンチオーク(新樽15%)、アメリカンオーク(旧樽)のホッグスヘッド樽で12ヶ月熟成。
【テイスティング・コメント】
エッジがほんのりと赤紫がかった深いルビー。粘性は高め。香りにはブラックベリーやブルーベリー、プラムなどの豊かな果実香にラベンダー、ミント、ブラックオリーブ、ペッパーやクローブなどのスパイシーなノート。加えて樽からくるタバコ、バニラ、チョコなどの芳しい香りやタール、皮革などのブーケが続き、複雑さと奥行がもたらされる。アタックはソフトでなめらか。継ぎ目のないシルキーな舌触りで凝縮した果実感で満たされる。高いアルコール分にも威圧的な要素はなく果実本来の風味がひしひしと感じられ、美味しさがこみ上げる。旨みがあり、熟したタンニンが存在、しっかりとした骨格はもちろんだが柔らかな酸とも相俟って飲みやすい印象を受ける。香り同様に新鮮な果実とオークのヒント。過度な甘さを抑え見事にドライな味わいに仕上げている。アフターには果実とオークのフレーヴァー、余韻も長め。合わせるお料理は、赤身肉料理やハンバーグ、ベーコンを使った料理、ピーマンの肉詰め、豚の角煮、茸のリゾットなどがおすすめ。
※2017年1月試飲
■トイスナー・ワインズ
バロッサの新しい風
オーストラリアのワイン評論家ジェームス・ハリデーは、トイス ナー・ワインズを「バロッサに古くから存続する低収量・無灌漑の古木の畑を守ろうとする若い醸造家たちのニュー・ウェーブ」と評しています。
古木のグルナッシュの畑を守るため、2001年に誕生
醸造家のキムと友人で栽培家のミックは、バロッサのある著名なワイナリーで出会い、いつしか自分たちの理想を共有するようになります。トイスナー・ワインズの設立は、この2人がバロッサで6代続くブドウ栽培農家リプキー兄弟の話をパブで聞いたことをきっかけとします。
リプキー兄弟は、北部エベネザーにある祖父が植えた古いグルナッシュ畑の伐採を相談していました。その畑のブドウは古木で低収量であることに加え、グルナッシュを重要視しない“Big Boys”と呼ばれる大手ワインメーカーの一つに破格値で買い叩かれていました。売れば売るほど赤字になるグルナッシュをこれ以上育成管理できないと考えたリプキー兄弟は、この畑を当時人気だったシャルドネに植え替えることを考えていました。
この話を聞いたキムとミックは、コブだらけの古木の畑をなんとか救いたいと、ブドウを買い取り自分たちでワインにするための資金集めに奔走します。そしてようやく畑のブドウの1/4を買い取ることのできる資金を集めてリプキー兄弟を説得し、古木グルナッシュの畑を存続させることに成功しました。2001年、キムが27歳の時のことです。
バロッサの黒い宝石とコミュニティの繋がり
キム・トイスナーはバロッサの「黒い宝石」、特にグルナッシュ、マタロ、シラーズなどの古木が生み出す果実に深く魅かれていました。その思いはフランス、ローヌ地方への研修でいっそう深まったと言います。
トイスナー・ワインズの特徴は、古木が生み出す、粒が小さく厚い果皮を持ちバランスのとれた果実を風味豊かに表現することです。何世代にも亘って丹念に畑の手入れを続ける栽培農家との信頼関係、バロッサでワイン造りに携わる人々との緊密な繋がり、これらが厳選された良質な果実の確保を可能にし、トイスナー・ワインズの原動力となっています。
トイスナー・ワインズのスタイル
「なぜトイスナー・ワインズを設立したか」という問いに、キムは「自分が好きなワインを飲み、日々の暮らしを楽しみたいから」とシンプルに答えます。そこには自分たち自身も「多くの人が日常に飲めるワイン」を造っていきたいという思いも込められています。古木の畑から選んだ良質な果実でその土地らしさを生かしたワインを造り、リーズナブルな価格で販売すること。この条件を同時に満たすことは可能であり、そのようなワインこそ自分たちが目指すべきものであると、キムは確信しています。
伝統的な品種を用いて出来る限り干渉せず、自然なアプローチでブドウ本来の風味を引き出すことを重視するため、醸造過程の大半は手作業で行っています。澱引きはほとんどせず、清澄・フィルター無しで瓶詰めしています。
★評価
オーストラリア・グルメ・トラベラー:2007年度ヤング・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー獲得!
ジェームズ・ハリデー オーストラリアン・ワイン・コンパニオン:赤5ツ星獲得!