フリードリッヒ・ベッカー グリューナー・シルヴァーナー アルテ・レーベン Q.b.A. トロッケン 2017
ブドウはシルヴァーナー種(グリューナー・シルヴァーナー100%)。年産わずか1,800本。樹齢:40年。ステンレスタンクで醗酵、熟成後、7ヵ月間酵母とともに熟成。古樹由来の複雑味とミネラルにあふれた、充実感のある1本です。
テイスティング・コメント
グリーンがかった淡いイエロー。粘性は中程度。香りには洋梨やメロン、グレープフルーツ、マンダリンオレンジなどの新鮮な果実香にスイカズラ、ペッパー、ハーブのノート。そして濡れた石、チョーク、塩気、ミネラルのニュアンスが続く。複雑性があり、清涼感はもちろんエレガントさが印象的。アタックは爽やかでなめらか。果実味は力強く生き生きとしており、程よいボディに豊富なミネラルを伴う。輪郭は丸くフレッシュで心地よい酸度、旨みがたっぷりとした風味の広がりが素晴らしい。口当たりこそ爽快だが、中間部からは厚みが増し、染み入るような果実味の広がりが堪能できる。味わいは辛口ながら、アフターにはほんのりと甘い果実のフレーヴァーが持続する。合わせるお料理は、お刺身やお寿司、天ぷら、魚介のカルパッチョ、鶏肉のトマト煮、パスタ、大根の煮物などがおすすめ。
2017年1月試飲(2014年ヴィンテージ)
ベッカー醸造所
ファルツの巨大協同組合の跡継ぎだったベッカー氏は、品質へのこだわりから1973年、父の猛反対を押し切って独立します。当初は甘口や貴腐ワイン用の甘いぶどうばかり栽培していた他の農家から「ベッカーのぶどうは酸っぱくてまずい」と理解を得られぬままでしたが、わずか20年で、ワインにかける不断の努力と情熱から、ドイツのピノ・ノワールのトップの1人に登り詰めました。
2006年には、ドイツで最も権威のあるワインガイド「ゴーミヨ」誌で、今最も注目に値する醸造家に贈られる「ライジングスター」賞を受賞、さらに2004年~2012年にかけて、同誌で9年連続最優秀赤ワイン賞を受賞し、他の醸造家の追随を許しません。2008年には洞爺湖サミットでもベッカーのピノ・ノワールが使用され、来賓の方々を唸らせたことも話題となりました。
醸造所のあるシュヴァイゲン村はファルツの最南端。ベッカー氏はなんとフランスとの国境を越えて畑を所有しています。20世紀前半の混乱から何度となく国境線が入れ替わったこの土地ならではの逸話です(歴史的背景により、所有畑がフランス・アルザスとの国境をまたがっています。戦後の混乱期、1955年の独仏両国の特殊な法律によって、フランス領で栽培されたぶどうを使用してもドイツで醸造すればドイツワインとして販売することが可能になりました。)。
豊かな森に囲まれた地に彼は森も所有し、ワインの熟成に使用される樽の3分の2は自己所有の森のオークを使用しています。「世界一エレガントなワインを造る」ことを目標に掲げ、ワイン造りに命をかけるベッカーが醸すワインは果実味に溢れ、風味豊かながらも一貫してキレイな味わいです。また、化学肥料に頼らない、自然な農法を実践しているのもベッカー醸造所の特徴の1つです。