フリードリッヒ・ベッカー シュペートブルグンダー ドッペルシュトゥック トロッケン 2014
JAL国際線ビジネスクラスにリストアップされた実績をもつ特別キュヴェです。シュトゥックとは樽の単位で1200Lを指し、ドッペルはダブルの意。2400L の大樽にてゆっくりと寝かされた、味わい深いシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)です。ラベルは2004年に初めて日本に入ってきたときの懐かしい白地のエチケット。復刻版にて登場です。
石灰岩土壌、樹齢は13年~40年のものを使用。オークの開放樽にて2~3週間の発酵。その後2400Lのオークの大樽(ドッペルシュトゥック)にて12ヵ月の熟成。無濾過、無清澄にて瓶詰されています。
テイスティング・コメント
やや落ち着いたルビーレッド。粘性は高め。香りはラズベリーやストロベリー、レッドチェリーなどの果実香に、ゼラニウム、バラのドライフラワー、ポプリ、シナモンのヒント。そして、微かなオレンジピールの香り、ムスクや森林、ミネラルのニュアンスが感じられる。スタンダード・キュヴェ同様に、フルーティーさと野生味に溢れておりよりピュアな印象、マイルドで豊かな広がりをもつ。味わいはスムーズで、やはりピュア。スタンダードに比べ全体に柔らかく、ゆったりとした滋味がある。控えめで優しいタンニンが溶け込んでおり、爽やかさと繊細なミネラル感が根幹にある。じんわりと染み入る旨み、中盤から果肉感が増していく。過熟無くドライで、果実味と酸とのバランスに優れている。アフターに果実と上品なオークのフレーヴァーが持続し、このクラスとしては突出して余韻は長め、エレガントに仕上がっている。合わせるお料理は、鴨肉のロースト、ベリーソースを添えたポークソテー、鶏肉の赤ワイン煮、ペッパーを効かせた肉料理、ベーコン、カマンベール・フォンデュなど。
2019年5月試飲
ベッカー醸造所
ファルツの巨大協同組合の跡継ぎだったベッカー氏は、品質へのこだわりから1973年、父の猛反対を押し切って独立します。当初は甘口や貴腐ワイン用の甘いぶどうばかり栽培していた他の農家から「ベッカーのぶどうは酸っぱくてまずい」と理解を得られぬままでしたが、わずか20年で、ワインにかける不断の努力と情熱から、ドイツのピノ・ノワールのトップの1人に登り詰めました。
2006年には、ドイツで最も権威のあるワインガイド「ゴーミヨ」誌で、今最も注目に値する醸造家に贈られる「ライジングスター」賞を受賞、さらに2004年~2012年にかけて、同誌で9年連続最優秀赤ワイン賞を受賞し、他の醸造家の追随を許しません。2008年には洞爺湖サミットでもベッカーのピノ・ノワールが使用され、来賓の方々を唸らせたことも話題となりました。
醸造所のあるシュヴァイゲン村はファルツの最南端。ベッカー氏はなんとフランスとの国境を越えて畑を所有しています。20世紀前半の混乱から何度となく国境線が入れ替わったこの土地ならではの逸話です(歴史的背景により、所有畑がフランス・アルザスとの国境をまたがっています。戦後の混乱期、1955年の独仏両国の特殊な法律によって、フランス領で栽培されたぶどうを使用してもドイツで醸造すればドイツワインとして販売することが可能になりました。)。
豊かな森に囲まれた地に彼は森も所有し、ワインの熟成に使用される樽の3分の2は自己所有の森のオークを使用しています。「世界一エレガントなワインを造る」ことを目標に掲げ、ワイン造りに命をかけるベッカーが醸すワインは果実味に溢れ、風味豊かながらも一貫してキレイな味わいです。また、化学肥料に頼らない、自然な農法を実践しているのもベッカー醸造所の特徴の1つです。